愛されて幸せになるはずの女

 真昼にとって、一番面白くないのは、サンタクロースをサンタのおっさんとか言い捨てる真のことがいつからか気になったことだ。


 そもそも、学歴だって、六大学卒業の真昼に対して、この企業が貧しくて進学できない師弟向けに、経営している大学で、親や友達に紹介できないはずなのに、気になって仕方ないのだ。


 やっぱり、原因はこのクリスマスソングだと真昼はため息をついた。


 そもそも、真昼には同じ大学出の彼氏がいた。とても優しくてどんな我が儘でもきいてくれた彼氏だったのに、「運命感じちゃいました♪」って矢沢あいの少女漫画にも出てきそうな今時のあざとい女子にとられてしまったのだ。


 別に、失恋のせいでなく、枝毛分だけ、栗色の天然パーマを短くして、バレッタにとめて昼の買い物に行こうとしたら、真が声をかけてきたのだ。


 「紺野さん、賢者の贈り物しましたか?」と。賢者の贈り物とは貧乏な夫婦が互いに贈り物をするために、お互いの大事なものを売る…、男は時計を…女は髪を…。


 「はぁーっ。30歳過ぎたらカツラにも使わえない髪売れるわけないじゃない」って、キツく答えたのに、「紺野さんも知っているんですね」と笑顔で微笑んだ顔が、今までと違い心地良かったこと、


 ある時は上司に真面目な顔をして、靴下にプレゼントを入れる風習はたまたま貧乏な家庭にむけてほおった金貨が靴下だっただけで、手袋でもヤカンでも家中のあらゆるものが候補だったことを面白しろ可笑しく話してて、気になった。


 そもそも真昼は、薔薇だか鬱という字をすらすら漢字で書いたから夏目雅子は伊集院静に一目惚れして結婚したエピソードも好きだった。


 けど、真昼は我が儘で自分本意のプライドの高い女だから、この時期クリスマスソングと一緒に耳に入る真の声が愛おしい反面、憂鬱になるのだ。

         おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

薔薇の漢字で恋に落ちるなら… 紗里菜 @sarina03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ