儲毛話

二本柳亜美

第1話 儲毛話

「ねえちゃん、ロロシックスって知ってるかい?番号を選んでその番号が当たるとお金が貰えるっていう」


今日は晴れやかな日曜日、街金の中肉中背の男性社員と一緒に集金のおつきである、はたからみたらツレというものであるが実際はただの同僚である、このあとお昼には同僚の皆で集まってちかくで仲よく全員で昼飯を食べるのである。

私はみなで食べるお昼御飯が待ち遠しい。


話しかけられたので話返さなければいけない展開になった。

今日はかったるく日差しが差し込んで外の空気は冷たい天気だった

ブランドものをひっさげている私と中肉中背の同僚とちがって

目の前の男はボロキレのようなファーとよぶには汚らしい

フードに毛が生えたジャンバーと薄いいろのデニムのジーパンをはいていた

靴はボロボロのスニーカーである。

けっして当たっているようには見えないが

人は見かけによらない。

だが、しかし私は

「知らない」と不愛想に答えた

なにそれ興味あると答えたらホテルに誘ってくる男が大半だからだ

その話しかけてきた男がたくさん紙くずやごちゃごちゃした紙がはいった手持ち鞄から一枚の紙をぐしゃぐしゃ出した

なんか汚い

「金額が3000円から何億円になるらしい。当たらないとキャリーオーバっつってね、次回に回されるんだよ」

金がないのに賭けごとをする理由がわからなかったが

金がないから逆に賭け事をしたくなるのかもしれないと思った

「そんで?」中肉中背の同僚は答える

「なんと今、たまっている金額が6億円」

「そんな金、やっぱり当たらないんじゃないの?それより、今回の集金分を・・・」

「いいや、前回、前々回は当選者がでなかっただけで、その前は

当たってる人がいるんだよ」

集金相手は競馬に通うやることがない土木清掃業ので日曜には競馬とパチンコにいる40くらいの細見の男である

「競馬は当たるんですかい?」と同僚が聞くと「今日はダメだね、300円は当たったよ、当たるときは当たるんだよ10万とかね、その金で酒を買ってねパチンコにいって増やすんだ」

街金といっても事務員の給料は20マン後半くらいで、男性社員は50万くらいの給料だった。そこいらの月収よりはいい方だが、なんせ金には目がくらむ。

3000円や1万円を出して、数万円でも億でも「金が貰える」と言われたら

誰だって耳を貸してしまうだろう


私と同僚は言った

「当たるわけがないじゃないですか~」満面の作り笑いだ

私と同僚は夢をみない、もともと金融というのは現実的で冷めていて火遊びみたいなことはしない、リスクも背負わない

そういう人間の多いところといってもいいだろう

「いやいや、当たる方法があるんですよ」

そうさっきのくしゃくしゃの紙を出した。

たくさんの数字が書いてある

「なんだいこれは?」

「これは当選番号だよ」

「当選番号じゃー意味がないじゃないか」

「いや、だからこれは決まっているんだ」

「何が」

「当たる番号だよ」

「・・・そんなうまい話はねえよ」同僚が言った

私もそう思った

「いままで当たってきた番号には数字が出る確率があって

つぎ、何がでるか予想して当てるんだ」

「どのくらい数字があると思ってるんだ」

「だーかーら、その当たる数字を予想するために

この紙があるんじゃーねえか」

そういうと、男は手を出した

「?なんだい」

「今回の集金とこの紙交換でどうだ?」

「はぁ?だめだめ」

「ちぇ、話になんねえな~」

「まあいくらか立て替えてやるよ」

そういうと同僚は千円で手を打った。


私と同僚は宝の紙を手に入れたと、昼時、ほかの同僚に教えた

みんなで予想することにする、そうすれば誰かしらなんかしら数字が当たる確率が上がり当たると踏んだからだ

「1、4、60.」「32.56.19」

みんながそれぞれ2桁の数字を予想していく

2桁の数字が3個当たると3000円

2桁の数字が4個当たると1万円

5個当たると数十万円

6個当たると 億である


普段は冷静な街金業もこの時ばかりは子どものように

数字を計算してカードに鉛筆で数字を塗りつぶす。

塗りつぶすとカードになって当選の知らせを待つシステムだ


私は1枚300円を10枚買って3000円分、手に入れた

みな、ケチケチとチケットを買った

数人いる同僚の一人はやはり宝くじを「ばかばかしい」と

怪しんで手を付けなかった

本当に夢がない人間の職業である


そして2週間がすぎた

ロロシックス、当選番号発表の日である



私は数字をチェックする、番号は7、31、39 69 54 1である

当選番号は 1、 7、31・・・

一瞬目を疑った

だが、そのあとはハズレだった

一回の予想で3000円買って3000円当たったのである

プラマイゼロ、意味がない

私はいった「意味がないじゃないですか」

同僚はいった「夢の時間だっただろ」

そうにこやかな顔でごまかされた

私はため息をついた

「もう2度とやりません」

「でもあたったんじゃん、すげーよ」

「・・・まあ」 

しかし目的は金もうけだったので

予想していた時間が無駄だった

私はさっさと中断していた仕事にとりかかる

同僚は一つの数字が当たったのが嬉しかったらしく、

また次も挑戦した

当たったり負けたりしてはまってしまい

質屋にあづけたのかなんなのか、同僚の高級ブランドのアルマーニュという名前のきれいな毛立ちのファーのジャンバーが、3980円の静電気が起きそうなべたべたするファーになっていた


運命はどうすることもできない、勝つ人間は勝し負ける人間は負けるのである。


これぞ、儲「毛」話である。



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儲毛話 二本柳亜美 @aminatume0777

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