君と最後に会った夏

川霧 零

プロローグ

 炎天下が続く夏。勿論もちろん今日も例に漏れることなく、活発すぎる太陽は輝く。


 最近までは梅雨ですずしかったというのに……。そんな恨み言を言ってしまうのも無理はないだろう。今でこそ日陰にいるが、先ほどまでの陽射しは暑いではなく熱い。いや、痛いと言っていいほどだった。

 そんなことを考えていると視界は緑の動くものを捉えた。

 意識を現実に戻すと、既に乗ろうとしていたバスが停まっていた。他に乗ろうとしている人と言えば老人三人と若い女の人が一人。夏休みの朝とはいえ、目的地が目的地なだけにバスの車内も高齢化が進んでいる。

 いや、もう少し時期が後だともっと人もいたか?

 バスの車内に乗り込むと、今までの熱気が嘘だったかのように消え去った。流石はバスと言ったところか。冷房がかなり効いている。

 まあ何処に行こうとしているのかは割愛かつあいさせてもらうが、目的地に着くまでまだまだ時間はある。だから、僕の中で一番印象に残っている夏の話をしよう。

 いつだったか、今年みたいに熱い夏だった。あの時期のことは今でも鮮明に思い出すことが出来る。

 かつて好きだった人と最後に会い、人生で一番特徴的とくちょうてきなあの夏のことを。


 ああ、あれはもう五年も前のことか。


 これから話す僕と彼女の物語を、どうか聞いてほしい。

 君と最後に会った夏を。

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