世界樹の下で星を見つける

にんじんうまい

世界樹の下で星を見つける




「お兄ちゃん、これから私たちどうするの?」


僕たちは逃げて来た、あの革命前夜から。



***



世界の初めから終わりまでを守護する巨木をこの世界の人間は世界樹と呼ぶ。僕たちはそんな世界樹の麓にある国、ドレイク国で生まれ育った。

世界樹は遥か昔、星屑の中から芽生えたと伝承され、その惑星に生命の息吹と魔力のエネルギーを与え続ける、いわゆる聖なる源の樹木だ。それゆえに、古代から信仰の対象とされ崇められ、このドレイク国もその宗教をもとに築かれた歴史ある国だった。


「皆の者、よく聞け。明日の晩、この世界樹を焼き払う。我ら革命軍はこの使命を遂行せねばならない。我々のために、そしてこれからの我々の国家のために。」


革命前夜、両親達はこの一行の中にいた。僕ら子供の言うことなんて誰も聞かなかった、それほどまでにこの国は、ここの大人達は混乱していたのだ。


“世界樹に引き寄せられた巨大隕石がこの国に直撃する”


そのことが王家から伝達されたことが革命の引きがねだった。それに加わえ、元からはびこる世界樹絶対思想概念にうんざりしていた者達が拍車をかける。気づいた時には、革命の歯車は誰にも止められないほどまでに進んでしまっていた。


「いいか、明日の晩、世界樹一体が日の渦になる。おそらく一年は焼き切るのにかかるだろう。その周辺に住むものは早く身支度をしてここから離れろ。」


僕たち世界樹付近に住居のある子供達は一斉に世界樹から20km離れたこの深い森に送り出されていた。




****




「お兄ちゃん、これから私たちどうするの?」


僕は思わず妹を後ろから抱きしめていた。

妹は涙を大きな瞳いっぱいに溜め、見上げる。

その瞳には、こんな僕らの気持ちと正反対の美しい星空が映り込んでいた。


「大丈夫だよ。僕らはずっと一緒だ。誰も死なない。」


「で、でも。世界樹さんは?世界樹さんは私たちをずっと見守って、助けて来てくれたんでしょ?世界樹さんがかわいそうだよ…」


妹の瞳からついに一筋の滴が流れた。その瞳は同時に一筋の光を僕に見せる。

流れ星だ。


「ミカ、知ってる?世界樹さんはね、星屑から生まれたんだって。それじゃあ、星屑がつながると何になるか知ってる?」


ミカは恐る恐る首を横にふった。


「星座になるんだよ。ミカ。世界樹さんは死なない。いや死ねないんだ。世界樹さんのね、星屑を、僕らが離さないように手を繋ぎ止めてあげられたら、世界樹さんは星座として僕たちを見ていてくれるんだよ。そうだ、きっとそうに違いない。」


僕らは見上げる、この革命前夜の星空を、最後の星空を。

革命後にはもうないのだから。その代わり僕らは必ず見つけるだろう、世界樹の星を。

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