床屋花伝(140字小説)

塩塩塩

床屋花伝

板張りの床屋だった。

マスターは薄くなった中年男の頭を静寂のうちにサッパリとした七三分けに仕上げた。

七三分けとは元来、薄くなった頭頂部を隠す為の髪型である。

「秘すれば花なり」

日本社会に巣食う隠蔽体質の象徴の如き七三分けを、見事な花に昇華させたのだ。

マスターの名は世阿弥。

芸事の天才。

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床屋花伝(140字小説) 塩塩塩 @s-d-i-t

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