『衣・食・銃』は、際限のない没入感が得られる作品でした。
物語の舞台は、近未来の衰退しつつあるアメリカで、安全地帯と無法地帯がはっきりと分かれるような世界観です。
この世界観で、合理性を軸にした現実味が読者を引き込みます。
例えば、作中では、安全地帯に住む富裕層が“運び屋ギルド”を運営し、主人公はそのギルドの一員です。
現実でも、一昨年辺りに、アメリカでは、富裕層グループが街の一区画を、自治区にしようと活動していたという報道がありました。
正に“近未来”
私たちは、作品の息吹を実体験のように感じることが出来ると思います。
また、主人公である、“レタ”の無法地帯で生き抜くための合理性。これも重要な要素です。
彼女は、衣類、装備、思考まで目的のために洗練された合理性を持ち、これは、主人公たちの考えや行動を、読者がすんなりと理解でき、巻き込んでくれます。
そして、彼女たちを、襲うのは、この“彼女の信奉する合理性”から外れた事柄なのです。
ストーリーは堅実で、描写はスムーズ。
まるで、彼女たちの行動を追体験したようでした。
ご縁がありこの物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきます。
本作は少し未来の北アメリカ大陸にて、掠奪がはびこる荒んだ環境で"運び屋ギルド"に所属する主人公の女性が、1度きりのスクールバスに乗り損ねた少年を家まで送り届ける、という仕事を請け負うところから始まります。
それは旅の始まり。年の差のある彼らのやり取りから垣間見える世界情勢は厳しく、二人が今後歩む道のりは容易なものではないことが伺えます。
この物語の魅力として外せないのが、主人公の彼女の存在。台詞回しや行動から伺える、彼女の能力の高さ、用意周到さ。それら全てから醸し出される実力の高さ。そしてそれだけでは終わらない、彼女の持つ人間臭さが、キャラクターとしての魅力であると勝手に思っております。
そして作品全体の雰囲気。次々と舞い込む展開や、キャラクター同士の軽快なやり取り。扱われる小物の描写までリアルを追求されていて、それはさながらハリウッド映画のように感じられます。映像化はまだですか。
また、本作の一番巻末にある、おまけの設定資料集。すべて読んでからこれを見ると、目を丸くすること間違いなしです。
綿密に作りこまれた世界の中で息づく、旅の物語。最後の展開はグッとくること間違いなし。他の皆様も是非読んでみてください。