第4話 ドワーフとホスト

目が覚めると、また知らない場所にいた。夜になったのか周りが真っ暗で近くのかまどの火がわずかに周囲を照らす。


周りをよく見ると、作りかけの剣や壊れた道具が転がっていた。


見た目からしてこの場所は、鍛冶場だ。


そんな周りをゆっくり見回す暇もなく




ゴツッ!




「グッ!」




自分の顔に拳が飛んできた。




「目が覚めたらしいじゃねーか、人間!」




目の前に先ほど森で出会った男が立っていた。隣にもう一人の男が立っている。身長と体系はほとんどおなじで、顔は中年男性のような見た目だ。


僕は逃げようと立ち上がろうとするが、柱に両手を縛られていて身動きができない。




「人間、お前はどこから来た?旅人にしては、上等な服を着てるじゃねえか?人間の貴族みてぇだな。それに酒くさいぞ?もしかして、酔っぱらってここまで迷子になったわけじゃないよな?ハハハハハッ!!」




男は、笑いながらもう一発僕を殴る。


覚えてろよ、この借り絶対に返す、僕は、こいつにいつか復讐してやると決心した。


男がもう一発殴りかかろうとした瞬間、隣にいた男が手をつかんで止めてくれた。




「兄さん、やめてくれ!そんなに殴ったら喋れなくなってしまう。それに別にこいつは悪いことしたわけではないじゃないか!」




「うるせぇ!、弟の分際で俺様に指図するんじゃねぇ!」




男は、つかまれた手を振り払い隣にる弟を殴る。


そして、少しかがみ僕の髪をつかみ言葉を吐き捨てる。




「まぁ、今日はここまでにしてやろう。明日は覚悟しておけ!容赦はせぬぞ?」




と言い捨てた後に立ち上がり




ペッ!




僕の顔に唾を吐いて、出て行った。


男の姿が見えなくなったとき、先ほど殴られて倒れていた弟が立ち上がりゆっくりと僕に近づいた。




「すまないね、兄は昔あんなじゃなかったんだ。この国の姫様と婚約が決まってから変わったんだよね。君が自由になれるように話付けてやるから、君は何者か教えてくれないか?」




弟は布を水で濡らし、殴られて腫れた僕の顔を優しく拭う。


僕は一瞬、また殴られると思って警戒はしていたが弟の素振りを見て少し安心した。


質問の事だが、どう答えれば良いかわからない。自分が別の世界から来たんだって正直に言うべきか?いや言っても信じてもらえない。


ここは、どうするべきだ?


考えろ!


生き残るために!




「わからない.....んだ..ここはどこ?」




これが拷問されずにすむゆういつの答えだ。


記憶がなければ、何かを聞き出そうとしても答えは返ってこない。それなら拷問しても無駄だって、馬鹿でもわかる。


あとは、いつ逃げ出してもいいようにここ周辺にある村の情報そして一番近い町を聞き出せるように考えないと。




「記憶がないのか?、ここで一番近い人間の村なら東にあるトンタッカ村かな?でもその身なりを見ると貴族っぽいよな?ウルフランド王国?それともバサンカ帝国?でもその黒い髪そして黒い目まるでこの森に住む魔女みたいだな。ここじゃ、黒い髪に黒い目は珍しいよ?もしかしたら、かなり遠い国から来たんじゃないか?」




聞く必要もなかった。


この男は先ほどの男と違い人が良さそうだ。


どうにかしてこの男を利用できないか僕は空腹と疲労で意識が消えそうになりながらも必死に考える。




「ここ...は、どこなんだ?」




僕は、今自分はどこにいるか聞く。


この場所の名前を聞いても絶対わからないが、意味はあるはず。


それに、もし細かい質問をして疑われるよりマシだ。




「ここは、ドワーフ王国だ。まぁ、王国って言っても村くらいの大きさしかないがね!」




男は笑いながらも少し悲しそうな目で言う。


ここは、ドワーフの国なのか、王国でも村の大きさはものすごく引っかかる。


国で村の大きさって、絶対訳ありだよな?




「もうメシの時間が終わって、残飯を全部、豚に食わせたから今日はメシを我慢してくれ。今日は、休みな。」




男は、喋りながら自分の背後に回り、僕を縛ってる縄を少し緩め寝っ転がれるように緩めてくれた。


男は、縄を結び直すと、立ち上がりドアの方に向かった。




「じゃ、また明日。」




と、言い残し部屋を去った。




               ☆☆☆☆☆




男が去ってから、数十分がたちなんとか、縄を解こうとしたが、解くことができなかった。


僕は、逃げるのを諦めてもう一度、情報を洗いなおした。


先ほど男が言っていた、「ドワーフ王国」


王国なのに村の大きさしかないっておかしい、見栄を張って王国にしてるなら、わかるがあんな悲しそうな顔をする必要がないはずだ。


きっと何かある。


今日は、もう休もうと目をつむり、眠りにつこうとした瞬間~




『ネフェルティ!待たんか!』




男の怒鳴り声が外から聞こえた。




『何が不満じゃ?ジェロムはこの国一番の戦士だぞ?夫にするなら間違えのない男だぞ?私はお前の幸せを考えてそうしたのじゃ!』




喧嘩か?


ジェロムってだれだ?




『この国一番強いと思うけど、あんな醜い見た目で性格も最低な男と結婚して、どうやって幸せになれっていうの!?』




今度は女性の怒鳴り声が聞こえた。


先ほどの男より大きな声で言葉をかえしていた。




『お前はこの国の王女だ!この国でお前にふさわしい男はあいつしかいない!』




王女!?


こんなすぐ近くに王女がいるつまり姫様がすぐ近くにいると、ドワーフの王女だからって先ほど自分を殴った男がドレスを着てるの想像してしまい、思わず笑ってしまった。




『王女って、なによ!ただの村じゃない!?お父様、あなたはいつまで自分を一国の王様だと思ってるの?私達は戦争に負けたのよ!だから、こうしてこの森に逃げたじゃない!』




これで、気になっていた事の答えわかった。


戦争に負けて逃げきった一族は、ここで身を隠し静かに暮らしているのか。




『お父様、私はね自由に生きたいの!自分で好きな人を見つけて結婚したいの!』




女性なら必ず思うであろう、人に決められた男と結婚なんて嫌だと。


僕だってそうだ、有名だからって、強いからって理由で結婚しろって言われたら、嫌と思うな。


まぁ、資産家って聞いた瞬間その日のうちに結婚するだろうね!




『じゃ、お前はどんな男がいいんだ?』




男は、先ほどまで怒鳴っていたが、娘に逆ギレされそして罵られたせいか、悲しそう声で自分の娘の好みの男性を聞く。




『細身で手足が長く、シュットしてる人で奇麗な顔をしていて、私をリードしてくれる、女性になれてる王子のような人!』




ドワーフの王女 ネフェルティは先ほどまで荒くなっていた声と全く違う妄想に滴るしたたような声で語り始めた。




『だから、ジェロムはそのような男じゃないか!』






『どこに!?どこに王子の要素があるの!?あんなのドワーフでもないわ、ゴブリンよ!それにあなた達は、その小汚いひげをどうにかできないの?見てて気持ち悪いわ、それに普段から汗臭いのよ!』




ネフェルティは、普段の生活でたまってる不満をもうこれ以上に抑えきれないと父親にぶつける。




『もういい!今日は勘弁してやる、私は部屋に戻って寝る!もう夜中だからお前すぐ部屋に戻って寝なさい!』






男は、娘に罵られたショックのせいかスタスタと早歩きでその場を後にした。








               ☆☆☆☆☆




ドワーフの国王が立ち去ってから数分


ぼくは、とんでもない事をドワーフの王女ネフェルティから聞こえた。




『私は、敗戦国家とはいえ、この国の姫よ!私にもきっと資格があるのよ!』




資格なんだそれ!?




ネフェルティは、そのまま独り言を続ける。




『予言の王の妻になる資格が!すべての種族を再び共存し平和へ導いてくれる予言の王の妻の一人に!』




予言の王!?




なんだそれは、すべての種族を共存させる!?


神が言ってたよな?俺に心優しき者を導いてくれって、それって共存を求める者たちの事か?


それに妻の一人にってことは、複数の妻を娶めとれってこと?


もしこの話が僕の知ってる神の予言ならば、きっと僕の事を指してるに違いない。でも複数の妻を娶る事に何の意味が?それにあの言い方だと姫様限定みたいな言い方だった。


それに神はなぜ僕を選んだんだ?


僕にどうやってすべての種族を共存させろというんだ?


僕は、ホストだぜ?女を口説いて、金を使わせることしかできない。


でも、もし神が僕を選び転生させた意味があるなら...




まさか!?




まだ確信はできないが、心優しき者とは、共存を求め平和を願う者の事を指していると。


そして、なぜ神は僕をえらんだのか。


簡単に説明すると、ホストで得た経験を活かし、国の姫を口説いて、自分の妻に迎え王様になって無理やり王の力で共存させて平和な世界にしろって事だ。




「なんて、無茶苦茶な神だ...」




僕は思わず言葉をこぼした。


神はきっと僕が少しでもやりやすいようにギリギリこの世界に干渉しない神なりの手助けなのかもしれない。


やる事が分かった以上すぐに行動に移すしかない!


それに運の良いことに第一目標の姫さんがすぐ近くにいる。


僕は、左足で自分の右足の革靴を緩めそのまま右足を強く蹴り上げて靴を飛ばす。


靴が物にあたり、




ゴン!




と大きな音を立てる。


すると閉まっていた、ドアがゆっくりと開いた。そしてドアを開いたのはもちろんドワーフ王国の王女、ネフェルティだった。

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ホスト・イン・ワンダーランド @naporeno

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