第45話 18歳までお預けを食らう男、それが俺!(涙)
それから三日間、俺は寝たきりだった。
一日目はノコギリ山からの帰りで、馬車の中でレーコに看病して貰いながらだ。
ドラゴンとの戦いの後、雑魚どもは俺が解放したカードのモンスターが一掃してくれたようだ。
もっともレーコの魔力が復活した以上、大抵の相手は敵ではない。
現時点でレーコに対抗できるのは、聖魔王と各国が協力している『帝国連合』くらいだ。
二日目と三日目はナーリタニアの高級ホテルで『ザ・ブレイブ』として過ごす。
この部屋は武器屋のハンスが用意してくれたものだ。
旅行中にはぐれドラゴンと遭遇し、そのために負傷した、という筋書きになっている。
こうでもしないと、シータ・ナーチャ・リシアの三人が納得しないからだ。
街では「あのブレイブが傷を負ったのか?」と言う者もいたが、「たった一人でドラゴンを倒すなど、さすがは『ザ・ブレイブ』だ」と賞賛する声の方が多かった。
ホテルにいる間「誰が俺の世話をするか」という事で三人は揉めていたが、最後に俺が「三人で騒がれる方が傷に触る」と言った事で、彼女達も大人しく引き下がった。
そして昼間だけ、三人揃って看病に来るという事で決着がついた。
この二日間はレーコには会えない。
四日目、俺はホテルを出て家に戻る事にした。
医者は「一週間はホテルで安静にしていた方がいい」と言ったが、家でレーコに治療して貰った方が効果があるし、一刻でも早く帰ってレーコの顔が見たい。
古道具屋で呆れるハンスの顔を見ながら、俺は「タダオ・ナミノ」の服装に戻った。
痛む足を引きずりながら、新しい我が家へと向かう。
前の家は半壊してしまったため、急遽新しい家を少し離れた場所に購入した。
付近を牧場に囲まれた瀟洒な田舎邸宅だ。
家の結界と封印を確認し、玄関を開く。
「タッ君!」
レーコが飛び出して来て、俺にしがみ着いた。
「ごめんね、ごめんね。私が旅行なんて行きたいって言ったばっかりに……」
レーコは涙ながらにそう言った。
馬車の中でも同じ事を繰り返し言っていた。
「大丈夫だよ。それに二人で旅行に行こうって言ったのは俺なんだから」
「でも……私の所為でタッ君はこんな目に……」
「いやむしろいい経験だったよ。最近は戦闘でも楽してばかりだったから。ここでドラゴンと戦えたのは、むしろ良かったと思っている」
これは本心だ。
聖魔王と敵対する以上、いつかはドラゴンとの戦闘も避けられない。
今回の件でドラゴン攻略の方法も、少しは見えた気がする。
ちなみに次はグリフォンのタロアの支援は望めない。
レーコが正気に戻ると、タロアは元通り俺を嫌った。
ナーリタニアに戻る時も、俺を乗せて飛ぶことは拒んだそうだ。
レーコは昼間も近くに居られるように、リビングに簡易ベッドを用意してくれていた。
「いや、もうベッドで一日中寝てるほどじゃないよ。普通にしていて大丈夫だから」
「ダ~メ。今日くらいは大人しく寝ていなきゃ。それに私にも看病させて!彼女たち三人は二日間もタッ君の世話をしたんでしょ?」
そう言って俺を強引にベッドに寝かしつける。
その日は一日中レーコのそばで過ごした。
暖かい日差しの差し込むリビングで二人でノンビリしていると、心の底から幸せを感じる。
夕食はレーコがシチューを作ってくれた。
彼女は「私が食べさせてあげるね」と言って俺の隣に座り、皿からシチューを掬ってスプーンを俺の口に持ってくる。
俺は「いいよ、そこまでしなくて」と言っても、彼女は断固として譲らなかった。
食事の後は彼女に身体を拭いてもらい、一緒にベッドに入る。
その時には俺の身体は、もうほとんど完治していた。
ベッドに入ると、俺の男の欲求が抑えられない。
「レーコ!」
俺は後からベッドに入って来たレーコにむしゃぶりつく。
「あ、ダメだったら」
そんな言葉は無視して、レーコの薄いシルクの寝巻きの前をはだけさせた。
Gカップの豊かな胸が目の前に現れる。俺はその乳房に吸い付いた。
「ア、アン、ダメ、ダメだったら」
レーコが軽く喘ぎながら俺を静止する。
だが俺はそんな声など無視して、レーコの胸の豊かさを堪能していた。
しかし俺が彼女のパンティに手を掛けた時、レーコは厳しくそれを撥ね退けた。
「もうっ!いつもいつも言ってるじゃない!十八歳になるまでHはダメだって!怒るよ、ホントに!」
「でもレーコ、俺はもう十六歳だ。もう我慢できないよ!そもそも魔女は若い男の最初の精気を吸い取ると、その分だけ魔力が強くなるんだろ?」
俺は図書館館長のマハブ・ザナガード氏から聞いた、俄か知識で説得しようとした。
「それはそうだけど、十八歳になる前に魔女とHすると、相手の男の寿命は短くなっちゃうって言ってるでしょ。私は一分一秒でも長くタッ君と一緒にいたいんだから!」
俺は彼女の頑なな拒絶に合って、仕方なく手を引っ込めた。
「その代わりに、ずっと抱っこしててあげる」
レーコは俺の頭を優しく抱きしめる。
レーコの胸は本当にいい匂いがする。
そんな中、俺はずっと不安に思っていた事を口にした。
「なぁレーコ。レーコって本当に俺が好きなのかな?」
「どうして?なんでそんな事を聞くの?」
「ザナガードさんが言っていたんだ。あの大剣には『封印を解いた者が、伝説の魔女と魂の契約を結ぶ。よって全ての女に愛される呪いを受ける』って書いてあるって」
レーコは無言だった。
「だからレーコは封印の呪いと同じく、単に『封印を解いた相手を愛する呪い』に掛かっているだけで、本当は俺じゃなくても誰でも良かったんじゃないかって……」
「タッ君!」
彼女は俺の名を呼ぶと、両手で俺の顔を上げさせた。
「本当に怒るよ。そんな事を言うなんて……」
彼女の目が真剣に俺を見つめる。
「私は今のタッ君が好きなんだよ。強くたって弱くたって、タッ君だから愛しているんだよ。私の人生で初めて、男性への愛を教えてくれたのがタッ君なんだから」
そう言って彼女は、優しく俺にキスをしてくれた。
そうだ、俺は彼女を封印から解いた時、その姿を目にした時から彼女に惹かれていた。
俺が心から愛する女はレーコしかいない。
彼女が俺の全てだ。俺の世界であり、俺の人生でもある。
レーコを失った生活など考えられない。
そしてレーコとの幸せな日々を過ごすためには、レーコを人間に戻すか、聖魔王を倒すしかない。
俺は心新たに決意を固めた。
俺なら出来る。
レーコが俺に勇気を与えてくれる。
俺は『ザ・ブレイブ』と呼ばれる男、辺境一の勇者なのだから。
(完)
>ここまでお読み頂き、真にありがとうございました。
また別の作品でもお会いできる事を期待しております。
元奴隷の最強勇者。秘密結婚した妻は伝説の魔女! 震電みひろ @shinden_novel
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