第4話 死らない

 死らない


 彼は死んでしまった。死体も好きなように実験された。しばらくして研究員たちはまた検体が必要だと口々に話した。


 突然、知らない天井研究所に警察が押し入ってきた。勝手に入るな実験中だという怒鳴り声と、怯むな逃がすな捕まえろ、殺人集団め!という怒鳴り声。警察の特殊部隊が広い研究所内の各部屋もくまなくしらみつぶしに見ていく。


 死にたいなら私たちの役に立って死ねと彼らは語ったそうだ。自殺志願者がいなくなる事件が多数発生し、死体もでなければ遺書もない。親や恋人、遠い親戚、近所の人、昔の友人。彼らのことを覚えていた人や心配していた人が通報した。何件かあり、やっと動き出して発覚した事件だった。


 彼らが自分で死ねるはずがない。だいたいそんな通報だった、どこかで悪い人にそそのかされて、何かの事件を手伝わされてるかもしれない。死ぬ勇気なんてない、真面目に生きたくないだけなんだから。本気じゃないのよ甘えてんのよ。だけど、まさか本当に死ねなんて思うわけないじゃない。あとは単純に心配している親もいた。


 カキコミサイトやツブヤキの死にたいという短い願いは減らない。

 死にたくない

 生きたい

 でも行き詰まり

 でも生きずらい

 代わりに死んでしまえばよかった

 あのとき助からなきゃよかった

 未来なんてわからないのに


 知らない天井も未来にはなくなるかもしれない。全面絶対割れない強化ガラスになって、天井は満点の星空と改正の青空になるかもしれない。冬場も行きを溶かして、夏場も市街戦をカットしてくれる。


 そんな実験をしているかもしれない。

 死にたくなくなる天井の研究が進むかもしれない。

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死にたくない 新吉 @bottiti

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