レベル24 最終話

 テレポートを終えると、本当に中学校に体が移転されていたので驚いた。でもこれはオレの体ではなくて、そう感じるようにTWがしているのだと心に刻み込む。


 テレポートの部屋にはクレオとフレイアは既に居なくて、エリーも椅子から立って急いで出て行こうとしている。オレだけ出遅れたけれど、急いでマイちゃん親子の居るレストラン『お、うまそうじゃん』に行く。


『お、うまそうじゃん』に行くと人集りが出来ており、その手前にマイちゃんが心配そうにしながらこちらを見ていたので近寄って行った。


「あのね、クレオお姉ちゃんが、マサトにいちゃんも来るから案内してって言ったんだ。こっちだよ」


 クレオお姉ちゃん……?

 と、とにかくマイちゃんの後を付いて行くと、ペッパーさんが太ももを抑えて苦しんでいた。


「大丈夫ですかペッパーさん!」


「私は何とか大丈夫です。向こうにいるマイクと名乗る暴れ者がレストランに来て、有り金全部寄越せって言うので、包丁で立ち向かって行ったら足に蹴りをくらいまして。あの人、素手なのに無茶苦茶強いですよ。


 それで常連さんに来てもらって人数でやっつけようとしたのですが、すでに数名動けなくなっているんです。動けなくなった人に白い手袋を渡して、その人がそれを拾うと、お金がマイクに自動的に移動するんです。決闘で負けたからと画面に表示されて……。私のお金もあの人に全て移動されてしまって……。


 でも、どうしてマサトさん達がここに居るんです? ボス攻略で、遠くの町まで行っているものとばかり思っていましたよ」


「その話は後でします。あの筋肉バカをやっつけてから」


 母さんごめん。また言ってしまった……。


「あの筋肉バカって……、マサトさんはマイクを知っているんですか!?」


「ちょっとした因縁ですよ」


 オレはそう言って人垣の中に入って行った。


「みんなのお金を返しなさい、マイク!」


 大勢の人達の罵声が聞こえるけれど,その中で今まで聞いた事が無いような怒鳴り声でクレオが言った。クレオがこんなに怒るなんて、目が思わず大きくなったオレ……。


 って、今はマイクを何とかしないとな。

 オレはクレオに負けないくらい大きな声でマイクに言う。


「筋肉バーカ。オレを覚えてる!?」


 母さんごめんなさい。またまた……、悪い言葉を使いました……。


「お前はマサト! 俺に卑怯な手を使って決闘に勝って、有り金全部奪っただろ。この卑怯もんが〜〜!!」


 え……。筋肉バカは自覚が無いのか……?

 秒殺で気絶させたから、何でオレにやられたか判らなかったんだ。


「やっぱりお前は卑怯な手でオレに勝ったみたいだな。今のお前は何も言い返せないし。もう卑怯なアイテムも無いみたいだしな。それを拾えよ、マサト!」


 そう言うとマイクは、又しても画面から白い手袋を出してオレの前に落とした。オレはそれを拾うと、前と同じ様にマイクに投げ返す。


「お前バカなの? こんなに大勢の人が見ている中で、お前は悲鳴をあげるんだぜ。おい、早く始めようぜ」


「決闘の方法は素手でいいのか?」


 オレは出来るだけ優しくマイクに言った。


「それ以外あるかよ」


 オレは冷静に言い始める。


「じゃ決まりだね。かかって来ていいよ筋肉バーカ」


 母さん……。これで最後にします……。


「なんだと、このやろう!」


 マイクはまたしても、隙間だらけでオレに近付いて来る。今度は秒殺にならない様に気を付けて、彼の攻撃を軽くいなして行く。


「お、お前。逃げるのだけは、は、早いな」


 すでに息の上がっているマイク。オレはまだ余裕があり、更にマイクの攻撃をかわしていく。


「ハアァ、ハアァ、ハアァ、ハアァ。

 お、お前。こ、攻撃できないのか?」


「それではお言葉に甘えて攻撃を開始します」


 オレはそう冷静に言うとマイクの懐に入って、関節技で彼の右手の肩から腕を脱臼させる。


「イタタタ。な、何でお前がこんな技を使えるんだ……?」


「参ったと言えば、これ以上攻撃しないけれど、どうする筋肉バーカ!」


 あ……。言わないつもりが、つい言ってしまった……。


「くそったれが〜〜! 足だけでお前を倒してみせる!」


 マイクはそう言うと、足蹴りだけでオレに攻撃をしてくるけれど、余りにも隙があり過ぎるので、練習相手にもなりません。

 周りの人達が興奮して、歓声が段々と高まっていく。


「やっつけろ、にいちゃん!」


「いいぞ、そいつをぶちのめしてくれ!」


「あのにいちゃん凄いよ!」


 みんなの声援を受けてオレは最後の仕上げに入って行く。

 流れるような連続技でマイクの攻撃をかわしながら、空気投げで彼を床に叩きつけた。


 ドサァ!!


「グワァー!!」


 背中から床に落ちたマイクは苦痛で鈍い声を発して、顔が歪んでいる。すかさずオレはマイクに近寄って行き、片手だけで関節技を使って彼を動けなくした。


「もうやめにしないか? 勝敗は既に決まっているし」


 マイクはオレを睨み付けると、怒ったような顔で言い出す。


「お前になんか、絶対に参ったなんて言わないからな!

 殺せ! 俺を殺せ〜〜!!」


 やれやれ、根性だけは凄いよこいつ。

 確か決闘では、どちらかが参ったと言うか、或いは気絶させるかだったよな。仕方ない、大勢の人が見ているけれど、もう一度使うしかないか……。

 オレは人差し指だけで、体内で練った気をマイクに軽く打ち付けた。


「グフゥ……」


 マイクは気絶して、またしても口から泡を吹く。


「「「「「「「「ワァオ〜〜〜〜!!!!」」」」」」」」


 周りから大歓声が起こった。誰もが喜びの顔になっている。フレイア、クレオ、エリー達もオレに満面の笑顔を見せてくれている。みんなの顔を見ると凄く嬉しくなる。

 幼少の頃から習ってきた八極合気だけれど、辞めないで修行を続けてきて良かったと、これほど強く思った日は初めて。


 今までの人生で、最高の日だ!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


作者の後書き


最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました。

もしよかったら感想を書いて頂けると嬉しいです。


それではまた、他の小説でお会いしましょう。


良い一日をお過ごしください。

って、寝る前の方は、良い夢を見てください……。

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武器がない方が強くなれるんですけれど、現実世界とVRが融合した世界で通用するのか試してみないと分かりません。 坂本ヒツジ @usasasuke

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