レベル23

 今朝も寝不足だけれど、気持ちの良い寝不足……。フレイアとの誤解が解けて、精神的にオレは気分が最高だ。

 ジュリアも元気で、オレとフレイアがあの後会った事を知らないので甘ったるい声で話しかけて来る。ちょっとウザい……。


 いつも以上に元気にしているのはクレオで、どうやらフランクさんと話ができたからだと推測した。クレオは昨夜、フランクさんに最も多く話をしていたから。



 オレたちは横須賀市のボスを攻略する為に、魔物を殺しながら目的地までたどり着いた。


「断崖絶壁の迷路みたいね」


 そ言ったのはエリー。入り口を見つけて中に入ろうとしたら画面が突然現れた。


『横須賀市は安全地帯になりました』



「え、嘘……? 誰かがここのボスを倒したの……?」


 エリーがそう言うと、しばらくして入り口から5人の男達が自信満々で出てくる。こちらに気がつくと彼らはオレ達に近寄って来た。

 えーと、どこかで見た覚えのある……?


「お前、もしかして正和なのか?

 俺だよ俺。つよし


 剛って、もしかして道場に居たあの剛……?


「八極合気に居た、あの剛なのか?」


「おうよ。ひっさしぶりだな〜。4年ぶりか?」


「そうなるね。で、ここのボスを倒したのは剛なのか?」


「おうよ、俺達だ。ちょっと手こずったけれど、何とか倒せたよ。

 正和もボス攻略しているとは驚いた。控えめで、内にこもって居た奴とばかり思っていたからな。

 で、ゲームでの名前は? 俺はゴウを名前にしている」


 クスッ。


 ゴウの名前を聞いた途端、後ろの誰かが笑ったんですけれど……。


「オレはマサトにしている」


「マサトか、友達申請しようぜ。

 それより誰だ、さっき笑った奴は? マサトの後ろにいる4人の内の1人だよな?」


 エリーが前に出てきて、満面の笑顔で言い始める。


「私でーす」


「何で俺の名前を言ったとたんに笑ったんだ? 可愛い顔しても返答によってはタダじゃおかないぜ」


「私の名前はエリー。この名前を聞いて思い出さないゴウさん?」


 エリーの名前を聞くと、ゴウは半歩下がって驚きの表情に変わって行く。


「ま、まさか。あの大きなメガネを掛けて、俺と戦ったエリーがお前だって言うのか?」


「ピンポ〜ン。正解でーす」


「う、嘘だろおい。あのエリーがこんな小娘だったなんて……。

 マサト、こいつ一体何者なんだ?」


「えーと、義理の妹になるんだ。こちらは義理の母さんでクレオ。それに、ジュリアとフレイア」


「お前の母ちゃん死んだのか……。

 いやいやそれよりも、フレイアってもしかして、あの美少女アバターのフレイアか? そういえば、あのアバターにソックリ……」


 ゴウは、食い入るようにフレイアを見ている。


「ゴウ、フレイアは2人も居ないよ。あのフレイアだ」


「え……。う、嘘だろ、世界的に有名な2人がここにいるなんて……。

 お前一体……、何したんだ……?」


 何って……。


「偶然が重なっただけだよ。

 それよりもゴウ、オレ達のパーティーに加わらないか?」


 オレがそう言うと、ゴウの後ろにいる男達は首を縦に何度も何度も振っている。


「このレベルの高い人達と一緒にか?

 遠慮しておくぜ。オレが目立たなくなるからな。じゃマサト、又会おうぜ」


 そう言ってゴウ達は違う方向に歩いて行く。何度もよろけながら……。後ろに付いていた歩いていた男達は名残惜しそうに何度もこちらを振り向いていた。


「ゴウって面白い人ね。マサトの同級生だった人なの?」


 そう聞いて来たのはクレオ。


「八極合気の道場に居たんだけれど、修行に耐えられなくて数ヶ月で辞めたんだゴウは。修行は無茶苦茶、苦しかったからね」


「あんなにフラフラ歩いて、これからのボス攻略大丈夫なのか心配ね」


 それは言えてる。だからパーティーに誘ったんだけれど。


「彼はそれなりに強いから多分……、大丈夫だよ。

 それより、これからどうするみんな?」


 オレが言うと、4人が一斉に言い始める。


「「「「、観光かな、それで……。記念撮影をしながら……。遺跡巡りをしたいと……。船に帰りた〜い」」」」


 えーと、要約すると……。


「遺跡などを観光しながら記念撮影をして、船に帰りたいと思います。それでいいですよね?」


「「「はーい」」」


 賛成は3か……。1人は顔をしかめている。


「賛成多数で、観光したいと思います」


 それからオレ達は魔物の居ない、のどかな中世風の横須賀市内を観光しながら歩いた。でも……、他の人達が誰も居ないので、その点不気味に感じたけれど。




 船に戻ると、マイちゃんからオレ達に緊急連絡が入ってくる。


『らんぼう。ひと。おかね。とった。たすけて。マサトにいちゃん』


 文字の羅列だったけれど意味は理解できた。


「どうするみんな、何日もかけて中学校まで戻る?」


 クレオが真顔でオレに迫って言う。


「マサトはゲームの規約を読んでいないの?

 テレポートで行けるでしょ!」


 ま、マジで?


「テレポートで中学校まで行けるのクレオ?」


「規約にはそう書いてあるわよ。それに、この船の一室はテレポートが出来るのは間違いないから。みんな情報を全部確かめたの?」


 い、言い返せない。寝不足が続いたからそこまで読んでいないし、船の船室を全部確認してもいない……。


「とにかく、マイちゃん達を乱暴者から救うためにテレポートとするわよ!」


 宝箱を見つけると理性が吹っ飛ぶクレオからは想像もできないほど冷静に対処したので、改めて大学院を首席で卒業した実力を見せつけられた思い。しかも、会社でチームリーダーをしていただけの事だけはある……。


 クレオが見つけたという船室に行くと、そこには古い椅子が沢山並んでいた簡素な部屋だった。

 クレオが椅子に座ると画面の操作を始めると、突然クレオが消えた……。


「私達も行きましょう!」


 そう言ったフレイアも椅子に座ると画面を操作して消える。

 残されたオレとエリー、そしてジュリアも椅子に座って画面を出して操作を開始。画面の中でテレポートの項目をポチッとすると、エリーの通っていたマイちゃんの居る中学校が表示された。

 オレはそれをポチッとしようとすると、ジュリアが言う。


「私の画面では〜、その中学校が表示されないみたい〜」


 そうか! 今まで行った事がある場所だけ行けるんだ。


「ジュリアはここに残っていてくれ!」


 オレはそう言うと、テレポートをするのをポチった。

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