僕のクラスメイトが異世界に行ける装置を発明したようです。

ちるみるく

第1話 手違いで男子校に入ってしまった。

選択を誤った。


僕は目の前にそびえ立つ建物を睨みつけながら、改めてそう感じていた。 今日は記念すべき高校の入学式なのだけれど、僕がこのような表情をしているのはある訳があってのこと。


そう、それはこれからの高校生活を送るにおいてとても大切なことだった。 僕は、あの時の馬鹿な自分を往復ビンタ(10往復)したい気持ちにかられる。 一体、僕は何を考えていたのだろうか?


考えれば考えるほど自己嫌悪に陥り、僕は思わず上を仰いで叫び出してしまった。


「よりによって何で男子校を選んでしまったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


僕の名前は神木 かみき ひかる。 今年からこの男子校の生徒となる、至って普通の高校生だ。























とは言っても、いつまでも落ち込んでいるわけにもいかない。

僕は校舎の中に入って、自分のクラスを探す。


事前に張り出されていたのを見たけど、当たり前のように同じクラスに知り合いなどいなかった。 まぁ、そもそも中学生時代に友達と言えるクラスメイトがいなかったし...。


「いや、そんな残念なことを考えてる場合じゃない! 早く僕のクラスを探さないと!!」


えぇと、確かCクラスだったはず!

急がないと間に合わないぞ..............って着席時間まであと五分しかない⁉︎ 入学式早々遅刻とかマジでシャレになんないしその理由が校舎内で迷ってましたとか嫌すぎる!!!!


「くぅぅ、何で僕がこんな目に...」


そんなことを思いながら走っていると、隣の方から声が聞こえた。


「・・・一体どうしたの?」


「へ? お、女の子!?」


話しかけてきたのは、ここにいてはおかしいはずの女の子だった。

彼女は男子の制服こそ着ていながらも、その顔立ちは完全に女子のそれで、見つめられているとどぎまぎして落ち着かない。


だけど、そんな僕とは裏腹に彼女は不満そうな表情をしていた。


「・・・女じゃない」


「へ?」


「・・・俺は男だ」


一体何を言っているんだろう。

こんなに可愛い子が男のはずがないのになぁ...。 まぁいいや。


「それはそうと、Cクラスってどこか知ってる?」


「・・・Cクラスはここだけど」


「またまたぁ、君がここにいるってことはここは女子のクラスなんでしょ? 僕は男子だよ?」


「・・・話聞いてた? 」


うーん、このままだと本当に遅れてしまうなぁ、どうしようか。

改めて辺りを見渡すと、女の子の後ろに男子生徒の姿が見えた。


「そこの人、Cクラスってどこか分かるかな?」


「あ? ここがCクラスだが、それがどうかしたのか?」


ダメだ、この人もふざけてる。

あれ、というかここって女子のクラスじゃなかったのかな?

って教室の中男だらけじゃないか!


「一体全体どうなってるの...?」


「・・・何に戸惑っているのか全く分からない」


「あー、ちょっといいか、神木」


先ほどの男子高校生が呆れたように何か言っているが、今はそんな場合じゃない。 多分この女の子は無理矢理ここに監禁されているのだろうから、早く助けださないt


「その女みたいなやつは葉加瀬 はかせ じゅん。 信じられないだろうが、歴とした男だ」


「馬鹿なッッ!!」


ありえないッ! こんな可愛い子が男だなんてあってはならない!!


「・・・最初からそう言ってる」


不満げな顔のまま口を開く男の娘、葉加瀬 順。 いや、絶対女子だってこの子...。


「まぁいいや。 ところで君、何で僕の名前を知ってたの?」


さっきさりげなーく名前を呼んでいたのを僕が見逃すと思ったか!?

ふん、どうせ入試の日に僕を見かけてあまりにもイケメンだったから覚えてるとかそんなんだろうけど!


「あぁ、入試の日にお前を見てな。

あまりにも馬鹿そうだったから名前を確認しておいたんだ」


「必要ないよね!? 名前を確認する必要性は全く無いよね!?」


あまりにも酷すぎて泣くかと思った。 ちくしょう! こんな奴、もう二度と関わってやるもんか!


「二度と関わることはないと思うけど、一応名前を聞いておこうかな」


「同じクラスだからそれは絶対無理だと思うが...。 まぁいい。 俺の名前は中村 春翔なかむら はると。よろしくな、神木」


「よろしくね、三角コーナー」


「聞いてたか? 俺の名前はそんな台所にあるようなもんじゃないぞ」


「失礼、噛みました」


「違う。わざとだ」


「で、ここがCクラスでいいんだよね、生きる産業廃棄物?」


「わざとじゃねえか!」


「・・・どうでもいいけど、早く席に着かないと怒られる」


っと、ここでこんなアホに構ってる場合じゃなかった。 危ない危ない、葉加瀬が教えてくれなかったら手遅れに――


「おや、着席時間なのに廊下に出ているとはいい度胸ですね、神木君」


「なったぁぁぁぁぁ!!! 中村キサマのせいで時既に時間切れだよ!!

この借りは絶対に返すからな!!」


「早く席に着きなさい、問題児神木君」


「あぁ!! もう問題児って肩書きが!? 先生、これは誤解なんです!

そこの三角コーナーのせいなんです!!」


「何だと!? 俺は関係ねぇだろ!」


「あなたも静かにしてください、三角コーナー君」


「テメェ神木!! キサマのせいで俺の呼び名が三角コーナーになっちまったじゃねえか!!」


「問題児二人組、静かにしなさい」


「「何でだぁぁぁぁぁ!!!!」」


何で今日は悪いことがこんなに続くんだ!? 男子校だからか!? 男子校だからなのかぁぁぁぁぁ!? このままだと僕は間違って葉加瀬に告白して振られる未来まで見えるぞ!?


「うぅ、あんまりだよ」


「・・・自業自得」


「俺は全く関係ないよな!?」


「・・・変な奴に関わるのが悪い」


「言うことに欠いて僕が頭おかしい奴だと!?」


「・・・そこまでは言ってない」


今更不安になってきたけど、僕はもしかしたら灰色の高校生活すら送れないかもしれない。


はぁ...。 転校したいなぁ...。

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僕のクラスメイトが異世界に行ける装置を発明したようです。 ちるみるく @MILK999

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