副長談話〔セト、フィレネ、サード、ネリドル〕(小話集)
フ「暇ですわね。今回も半日は終わらないのでしょうし。支部長会議にもわたくしたちを混ぜてくださるとよいのですけど。どうせ非公式の会議ですのに」
セ「西の長がゴダ支部長である限り、オレたちにとってはメリットの方が大きい。西には同情するよ。あの人こっちの条件全部飲むし。なんでこんなに長く支部長やって——っと」
サ「面白そうな話をしているな。俺も混ぜろ」
ネ「サード先輩、東や北の人間とつるんでいるとまずいですよ。混ざってないで行きましょう」
フ「ご安心なさって。わたくしたちも、あなた方親中央派の方々と仲良くするつもりはございませんもの。そちらは違うようですけど」
サ「ほう?」
ネ「サード先輩、行きますよ! ほら!」
サ「待て。何の話だ、東の副長」
フ「あら、ご存知ではなかったの?」
ネ「あー、わー! 言わないでー!」
サ「これには構わんでいい」
フ「ええ。そちらのお家から、わたくしに縁談をいただいておりましたの。もちろんお断りいたしましたけど」
サ「何だと?」
ネ「あああああ……」
セ「初耳だ。西の大貴族が、東の大貴族にか」
フ「ええ。わたくしも驚きました。家格の釣り合いは取れておりますけど、わたくし、自分より弱い殿方はちょっと」
セ「そもそもベレリラ家は婿取りになるだろ? 成立しそうに思えないけど」
フ「婿取りでいいとのご条件でしたわ」
セ「へえ……」
サ「おい。どういうことだネリドル。説明しろ」
ネ「どうせサード副長には分かりませんよ! 結婚したい! 可愛い嫁さんが欲しい! 日々に癒しが欲しい! そんな私の切実な気持ちなんて!」
セ「癒し、ね」
フ「お黙りなさい」
ネ「ええい、平民のくせに恵まれた将来性で縁談強者の若者は黙ってろー! 普段から可愛い副官連れ回しやがってー! 西支部なんて男ばっかりでそもそも出会いがない! それなのに周りに家格がどうのと言われて、自由に恋愛もできない! そのせいで、手当たり次第に縁談を申し込むしかないんですよ!」
セ「手当たり次第だってさ」
フ「そろそろ本気で黙らせましょうか?」
サ「家督を継ぐはずのお前が婿入りだと? 西の貴族間の均衡が崩れたらどうするつもりだ? それに支部の副長職はどうする? 答えろネリドル」
ネ「いいんですよどうせ断られるんですから! 私なんて相手にされるわけがないでしょー! 夢を見る時間が欲しいだけです! 断られるまでの間、儚い夢を見たいんですよー!」
サ「もういい、こっちに来い。……ああ、騒がせたな。貴重な情報提供に関しては礼を言っておいてやる」
フ「どういたしまして」
セ「ほんと、大変ですね」
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