Licht

作者 雪白楽

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★★★ Excellent!!!

感情を手にしたAI――その心のケアを行うために設立されたAI対策機構AICO。そこに所属するディアナは、新たなパートナーとして恋愛型AIエレジーを迎える。けれど彼は、愛を忘れたAIであった…。

荒廃した世界を避けるように創られた世界は、まさにSFの世界そのもの。けれど、そこを舞台に展開される物語は愛に満ちています。
親愛、恋愛、誰かを信じる愛、信じたいと願う愛。愛の形は様々あって、そこからは時に苦しみや悲しみさえ生まれます。このような多面性は、どこか様々な波長を内包する『光』と似ているのではないかな、と本作を読んでいて感じました(最後にはそっと胸を暖かくしてくれる…という部分も含めて、です)。

読み終えた時に、ほんのり心が暖かくなる。本作は、そんな優しさを持った物語です。是非、ご一読くださいませ。

★★★ Excellent!!!

荒廃した世界の中で、目に見えない温もりが肌を優しく撫で、記憶の中に眠る忘れられない感情を艶やかに呼び起こすような、そんな静謐な物語でした。

文体は淡々としていながらも、重厚な構成となっており、読後感も胸につかえることなく、すとんとお腹の底へ落ちてきます。

私の拙い語彙力で例えるならば、冷めても美味しく、苦味のない、まろやかなドリップコーヒーです。

読み終わったあとは、そんなコーヒーで喉を潤しながら、ディアナとエレジーの行く末を案じつつ、物語の余韻を噛みしめたくなりました。

★★★ Excellent!!!

AI絡みの問題を解決する仕事をしている主人公のディアナ。
彼女はある日、AIのエレジーをパートナーに迎えます。
そして二人は日々起きるAI絡みの事件を解決していきます。

作中で起きる事件を解決しながらお互いへの理解を深めていくディアナとエレジーの姿が印象的な作品でした。
二人がそれぞれ過去の出来事の所為で愛に関する悩みを抱え苦悩する姿に心を打たれます。

ぜひ、作中で語られる『愛』に注目して読んで頂きたい作品です☆

★★★ Excellent!!!

本作の主人公は、荒廃した未来で、AIを相手とするカウンセラーです。

カウンセラーの専門用語として「逆転移」があります。カウンセラーはカウンセリングの最中に、クライアントに対して様々な感情を抱きます。時には悪感情も。その感情は、半ば、カウンセラー自身の心が映し出されたものです。自分が何を抱えているのか。それを意識しないとカウンセラーはクライアントとのカウンセリングを善い方向に導けません。

主人公が新たに担当するクライアントは、極めて優秀で、人間的なAIです。カウンセラーに逆転移を起こさせるほどに。

こうして、カウンセリングが、カウンセラー自身の心を解剖する旅となります。

重いテーマを描写する、文体は極めて堅実。端正さと読みやすさのバランスが高い位置でとれていて、破綻することがありません。

例えて言うなら、堅牢に建築されたジェットコースター。乗客は「死んじゃうー」と叫びますが、車体とシートベルトは確実に乗客をホールドし終点へと運びます。

後はシートに身を委ねればいい。さあ、発車ベルが鳴ります。