髑髏(どくろ)と蛇の太夫の小話

のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます

笑う髑髏に 嘆く 蛇太夫

「いやですわ ちょいと やりすぎて しもうたわ

おほほほ~」明るい口調で 女郎屋?の太夫は笑う


高々と結い上げた 艶やかな髪には 華やかな漆のかんざしを

数本差して 面差しの美しい顔には 白塗りの化粧が施されている

赤を主体にした高価な織物には 美しい花が色を添える


「あちき(私)は 御客人に それは楽しんでもらおうと

それなのに まあ おほほほのほおお~」


「ちょいとね~おほほ」


「・・・・まあ、それも仕方ないの」

綺麗な座布団の上に乗った

しゃれこうべ ドクロとも 頭の頭蓋骨が

『やれやれ』と言う感じで言う


「現世からの久方ぶりの御客人でえ

あちき(私) としては ほんに楽しんでもらおうとしただけで

ありんす(本当に楽しんでもらおうとしたです)」


「ちょいと力が入りすぎて あちきの腰から下

大蛇の尻尾で抱きしめたら

ぽきぽきと音がして 御客人が失神してもうて


まあ あちき(私)の身体を見たら えらい青い顔になりはって

お目を大きく開かれましての おほほほ~」



「旦那さん まずは一杯 お酒をお召し下されませ」


「そう言って 赤い朱塗りの酒器に 良い香りの

上等のお酒を注ぎまして

あちきの身体で抱き締めましたら・・いやはやですわ」


「そりゃ、お前さん 下半身は大蛇だからの


それで抱きしめられては

迷い込んだ現世の人間は 腰を抜かして 驚くわな」


「仕方ないでありんすよ」 

そっと着物の袂(たもと)で、浮かんだ涙を抑える


「まあ そう お嘆きなさるな そのうち良い客人も沢山来るさね」


「へえ そうでありんすか

あちきは それを楽しみに待っておりまする」



部屋の障子からの少女の声

「太夫、 お酒とお食事をお持ちいたしました」


「待っていたよ さあ早く」


「失礼いたします」入って来たのは まだ少女 そして

顔には目が一つのみ


お酒と食事を置いて 作法通りにそっと立ち去る


「一つ目のあの子も 段々と慣れて来たの」


「へえ、 そうですな」にこりと太夫は微笑む



「まあ、守り人 『天狗』の巡回の御方には ワシの方から

よくよく御話しておくからの


現世の人間の御客人も無事に 天狗の方に送られて

帰られた事だしの


太夫は何も心配せんでよいから」


「おおきに 有難い事でありんすよ」嬉しそうに微笑む太夫



「まあ、今宵は こんな処かの」


カラカラと骸骨の頭 しゃれこうべ は楽しそうに笑う


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