第12話 パパと娘の1日目(4)
店長や高原さんと朝の挨拶をしていると、既に時刻はAM9:00。
いよいよ、本屋さんの開店時刻になった。
…といっても、私が働いているこの本屋さんは、そこまで大きな本屋さんでは無いので、平日の昼間からそんなにお客さんが来る事は無い。
でも、そこがまた、私がこの本屋さんを気に入っているポイントでもある。
この本屋さんでは、ゆっくりと時間が流れるのだ。
あ!ちなみに、この本屋さんの店名は山下書店である。
そう、店長である山下 龍一は、この書店の経営者でもあるのだ。
私が勤めるこちらの書店以外にも、B県内に数店舗の書店を経営している。
お爺さんの代から受け継がれたようだが、詳しい事は私も知らない。
そうこうしているうちに、お客さんが入り口から入って来るのが見えた。
心美「いらっしゃいませ!」
…と言ってお客さんに目を向けた瞬間、私はその場で凍り付いてしまった…。
なんと!そのお客さんは、パパだった。
(え…!?嘘、パパ!?しかも、女装してる…!?)
パパは、ショッキングピンクのホットパンツにタイツ、フリフリとしたレースの襟付きニットを着ていたのだ…。
焦ってパニック状態に陥りかけた私は、自分自身に他人のフリをするように暗示をかけた。
そこに、ふと高原さんが視界に入る…。
高原さんは、ショッキングピンクのホットパンツ姿のオジサンに、あんぐりと口を開けたまま、呆気に取られていた。
まぁ、無理もない…。
そこへ店長が登場!
龍一「何か本をお探しですか?」
にこやかに話しかける、勇気ある店長の行動に、パパはこう返した。
パパ「コスメや美容の本が置いてあるコーナーはどこですかぁ~?♡」
驚く事に、パパは店長がイケメンである事を良い事に、猫なで声を出しながら質問している…。
完璧なる「ぶりっ子オジサン」の登場だ。
(ちょっと…!本当に辞めてよおおおぉぉぉ~!)
その様子を本棚の陰から見ていた私は、半泣きになった。
(まさか、私の名前とか出さないよね…!?)
パパは、店長と話しながら、明らかにキョロキョロと辺りを見回し、私の姿を探していた。
龍一「コスメや美容の本なら、こちらにありますよ!」
店長はテキパキと、パパを本のコーナーまで案内している。
パパ「あ~♡ほんとだぁ~♡ありがとうございますぅ~♡」
それを見ていた私は、パパの言動に恐怖すら覚えた…。
パパ!?と娘のハッピービューティー こすめのーと @cosmenote
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