教室には私と佳代と吉田くんの

 眼鏡は邪魔だったから外して、白衣も暑いからいだ。

 その下のドレスは着替えが面倒くさいので後回し。

「それで咲、どうしたのその白衣」

「お兄ちゃんの借りた」

「眼鏡は?」

「パーティーグッズの鼻むしった」

 レンズは入っていない。吉田くんがリムの中に指を入れてくるくるとまわして遊んでいる。

「窓井佐枝は何キャラ?」

「マッドサイエンティストだよ」

「マッド要素なかったじゃん。まじめっ子キャラかと思った」

「えー」

「ちなみに、吉田くんに断られてたらどうしてたの?」

「その場合はまた別キャラかな」

 今日持ってきたバッグのファスナーを開ける。

「これきゆうどうの道着。こっちはママのスーツ。それもだめだったときはこっちのかえるの着ぐるみで……」

「わかったわかった、もういいよ」

 あきれる佳代。

「延々とキャラチェンジしてたらどこかで吉田くんがこん負けするんじゃないかと思ってさ。でも邪魔が入らなくてよかったー。先生に見つかったらおこられちゃうし」

「別に怒られたりはしないでしょ。なにその恰好、とは聞かれるかもしれないけど。理由説明すれば大丈夫じゃない?」

「言えるかっ!」

 もし本当に全キャラやるはめになって、それでもお断りされていたら多分泣いてただろうな。良かった。

「佳代、かれはできたけどこれからも遊んであげるから安心して!」

「ちょま、えらそうだな」

「彼氏できたけど! 私、彼氏できたけど!」

「やかましいわっ!」

 浮かれる私のおなかを、丸めた教科書で佳代がはたいた。

 

(了)

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マリーの告白 小鈴なお 🎏 @kosuzu_nao

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