第4話缶詰
例えば、俺たちの世界が缶詰という形だったら
その中に入っているのは「俺たち」という可能性。蓋が開けられ光と希望に満ち溢れた世界はどんなに素晴らしいだろう。
外の世界に憧れを抱いていた俺は、外には光が溢れているのだと夢見ていた。
蓋の隙間から、扉の隙間からの光は希望。
そう、思っていたかった。
ぴこん♪
通知が1件入った。
只今より扉を開けるので、外へ出てください。
そう書かれていた。
俺はメールを送った。
多分、最後のやりとりになるだろう。
「外へ出ろってさ」
「ボクの方もだよ。
器用だよね。こうやってメール送って油断させるなんてさ」
「缶詰だったな」
「ほらね。言ったでしょ?
じゃね」
「じゃな」
もう逃げられないんだろう。
がちゃりと扉が開く音がする。その隙間からは、眩い光が溢れている。
缶詰の中から見た外の光は希望なんかではなく、絶望だった。
最後の保存食であった缶詰を食べきると、その光たちはどこかへ帰っていった。
世界は静かに夜を迎えようとしている。
誰もいない、静寂の夜を迎えようとしている。
最後の缶詰 犬屋小烏本部 @inuya
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