第6話

気がつけばそこは、見たことの無い草原。

寝転がっていた。

起き上がり、辺りを見渡しす。美しい所だ。

川が流れている。その向こうに、少女がいた。

空を見上げている。

僕は知っている、あの少女を。

まだこちらに気づいていない。

僕はゆっくりと川を渡った。

向こう側に着いた途端、雨が降ってきた。

もう、痛くもなんともなかった。

苦しくもない、落ち着いた呼吸で、その名を呼ぶ。

「めい、やっと逢えたね。」

少女がゆっくりとこちらを振り返る。

すると、その少女は口から泡を吐いていた。

まるで水の中にいるかのように。

そして、ゆっくりと言ったり

「五月雨のように、長く、ダラダラと、その妄想を引きずり回して、悲しいよ……。」

少女は泣いていた。

僕の目の前で、雨粒よりも暗く光る涙を流している。

僕は少女を抱きしめようとしたが、霧のように跡形もなく消えてしまった。


――僕の顔には、明るく光る、それでいてすぐ壊れてしまう涙が、点々とついていた。

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五月雨ガ、泣ク頃二 水無月 零夜。 @Ray_MRN

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