第10話 電波の先
今日も私だけの特等席に腰かけて、真夜中のラジオを聴く。
相変わらず辺りは静かで、月は明るく、海は穏やかだ。
吹いてきた風が、チェックのスカートのきれいに整ったプリーツを揺らした。
『4月からお送りしてきましたこの番組ですが、今回が最終回となってしまいました』
お気に入りの番組が、また一つ終わってしまう。
この番組聴いたよって、言えてないのにな。
最後の5分に耳を傾ける。
読み始めた手紙を聴きながら私の右手はポケットの中に伸びていた。
気づけば、大切な手紙を胸の前でぎゅっとしていた。
『僕の声は、届いていますか』
届いているよ、ずっと。
風に飛ばされて舞い落ちてきた桜の花びらは、私の手のひらをすり抜けて冷たい石の上に落ちた。
真夜中のラブレター 南 陽花 @hydrangea11
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