第9話 真夜中のラブレター

 ついに最終回の収録日。

 僕はいつもより少し緊張してマイクの前に座っていた。

 手の中には、クリーム色の封筒。敢えて取り出す音が入ってもいいと高崎さんから言われていた。

「マイクチェックOKです。本番行きます」

「お願いします」

 カウントとキューのあとに、いつものテーマソングが流れる。

 最後の5分が、始まった。

 僕は小さく息を吸い込んで、喋り始める。


『こんばんは。優介です。この番組では、皆様からお預かりした“大切な誰か”に宛てたお手紙を、電波に乗せてお届けしています。

 4月からお送りしてきましたこの番組ですが、今回が最終回となってしまいました。

 最後の今夜は、僕の手紙を読ませていただこうと思います。


 僕がパーソナリティを目指そうと思い始めたのは、中学生の時でした。

 ラジオの向こう側に確かに同じ番組を聴く「誰か」がいることを知って、その面白さを共有できる幸せを知って。

 その「人を繋げる力」に惹かれて、今度は僕が繋げる側の人間になりたいと思って、パーソナリティになりたいと言い続けています。

 だから僕はラジオの力を信じています。

 ラジオの奥に隠されていた面白さを教えてくれた、パーソナリティになりたいと思うきっかけをくれたあなたは、今もきっとどこかで聴いてくれているのですね。

 僕はパーソナリティになりました。

 僕の声は、届いていますか。

 この番組は今日で終わってしまうけれど、この先必ずもっと立派なパーソナリティになるから、そのときはまた、どこかで聴いていてください。

 電波の先にあなたがいると信じて、僕は声を届け続けます。

 あなたのことは忘れません。今までありがとう。またね』

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