第8話 右ポケットの手紙

 私もラジオで読まれてみたい。

 そう思い立って何度も番組宛てにメールを送ってみたけれど、採用されることはなかった。

 何をどんなふうに書いたらモクハチで採用されたのか、彼に訊いておけばよかったなと思う。

 大切な人への手紙か……と考えて、ふと思い出すことがあった。

 制服の右ポケットに大切にしまった、クリーム色の封筒を取り出す。

 そうだ、これを読んでもらいたい。あの声で、聴かせてほしい。

 もう何度も何度も読んだ手紙を、また開く。


  サキへ

 僕の夢は、ラジオのパーソナリティになることです。

 サキに出会って、ラジオの向こう側に確かに同じ番組を聴く「誰か」がいることが分かって、その面白さを共有できることがどれだけ楽しいか知りました。

 その「人を繋げる力」に惹かれて、今度は僕が繋げる側の人間になりたいと思っています。

 必ず立派なパーソナリティになるから、そのときはどこかで聴いていてくれるよね。

 いつか僕の声がサキまで届きますように。

 サキのことは忘れません。今までありがとう。またね。  優介

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