第7話:突然迎えた転機

 彼女は夏休みが明け、久しぶりに学校に行くと学校の見慣れた景色が変わっていた。それは、休みの間に改修工事が入り、年季の入った外壁が真新しい校舎のような外壁に様変わりしていたのだ。彼女はどこか、寂しい気持ちと隣の学区にある学校のようにだんだんと新しくなっているような気分とが入り交じっていた。


 そして、教室に入ってみるとさまざまな場所が変わっていた。教室も机もロッカーも全てが真新しくなっていて、気分としてはお友達に近付いたように感じた。


 この環境の変化が彼女の精神面、心理面に良い効果をもたらし、明莉が学校に行き始めてから初めて学校に行くことが楽しいと思える瞬間だった。


 そんな彼女にある日、吉報が届く。それは、通っている塾で行われる選抜試験で合格して全国模試に参加することになった。彼女は今まで選抜試験にも受かったことはなく、他の習い事でも良い成績を収めたことがなかった。その上、彼女のクラスには幼稚園の時からインターナショナルスクールに通っていて、学校でも成績は常に上位という子がいる。しかし、その子は特定の科目だけが良い成績で他の科目はあまりぱっとしなかった。


 そんな子に勝ててしまうとは思わなかった。そして、彼女がどれだけ頑張っても越えられなかった壁が少しずつ超えられているような気持ちになり、これからも頑張っていかなくてはいけないという使命感が彼女の中に芽生えていた。


 そして、嫌だった学校にも何も言わずに行くようになり、彼女は1つ階段を上ったようだった。そして、以前は「○○君にいじめられた。」という否定的な話しが多かったが、今では「今日は先生に褒められた。」・「今日はお友達に優しく出来るようになった。」という肯定的な話しが増えていっていた。そんな彼女が両親にとっては誇らしかった。なぜなら、今まで保育園に行き始めた最初の1年間は毎朝が戦場だった。当時は母親が朝送り、父親と母親半々で迎えに行っていた。しかし、彼女は毎朝「保育園に行かない」と泣きながら訴えていたのだ。理由は後で分かったが、その時は分からなかったため、彼女がただわがままを言っているのだと思ったのだろう。


 そして、幼稚園に入学した時も半年間は幼稚園に行きたくないと毎日機嫌を取って連れて行ったことが懐かしい。


 彼女の試験日は10月17日だった。しかし、その日には上二人のお姉ちゃんがバレーボールの試合とバスケットボールの試合でそれぞれ遠征が入っていて、母親は行けず、父親は休みだったが、友人達と接待ゴルフが入っていたため、同伴することは出来なかった。


 そこで、母親の妹に茉莉と明莉を面倒見てもらい、送り迎えもやってもらおうと思いついたのだ。


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初恋は雨のように NOTTI @masa_notti

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