07 final & prologue.

 つかれた。

 もう何もやりたくない。


 繁忙期の最終日。

 ここを抜ければ、ひさしぶりの休み。

 ひたすらに大変な仕事だけど。お給料がいいのと、居心地がいいので続けている。


 家に帰って。

 玄関に倒れ込む。

 もうむり。

 もう動けない。


 そうやって、しばらく、じっとしていた。

 やがて、靴を脚で蹴っ飛ばして脱いで。じわじわと、這って進む。


 テレビの前へ。

 モニターの前へ。


 よたよたと椅子に辿り着いて、座って。


 スイッチを入れる。


 ログイン画面。


 手を伸ばして。


 つかまれる。


「先に手を洗いなさい」


「うええ」


 彼。起こしちゃった。


「ごめんなさい。玄関で倒れ込む音大きかったね?」


「この世の終わりみたいな音しましたよ。ばたん、びたあんって」


「はずかしいなあ」


「はなはぶつけてないですね?」


 彼。はなを確認している。


「よし。大丈夫。手を洗ってきなさい」


「はな。はなが」


 はながかゆいアピール。


「手を洗ってきてからね。ほら。行ってらっしゃい」


「はあい」


 手を洗って。

 ゲームにログインして。


 彼に、はなをかいてもらいながら。


「きもちいい?」


「きもちいい」


「はい。口開けて?」


「ああん」


 今日は、ごはんも口に運んできてくれる。


「おいしい」


 彼のごはんは、いつもおいしい。


「つかれてないみたいな活発さですね」


「ええ。玄関で少し寝ましたから」


 彼がいるから。たのしくて、つかれが吹っ飛ぶ。それだけ。

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