目が覚めた。


「げほっげほっ。えっ。げほっ」


 なにこれ。

 はなが。はながすごくむずむずする。はな。かゆい。


「待ってください。動かないで」


「はながかゆいっ。かゆいですっ」


 なにこれ。


「待ってください。ちょっと待って」


 はなのかゆさが、じんわりと、解消されていく。


 ああ。きもちいい。


「ふああ。きもちいいです。ありがとうございます」


 えっ誰。


 ここどこ。


「おはようございます」


「あの。え。あの」


「ここは駅前の病院です。個室です」


「あなたは。え」


「俺は、あなたの隣の部屋の住人です」


「あ。えと。はじめまして」


「はじめまして」


 はじめましてなのに。なんか、はじめましての気がしない。


「あの。すいません。なぜこんなことに」


「あなたは、ゲームのログインだけで。通話にも反応しないし、動きもしなかった」


「あ。え。ゲーム?」


「あ。もうしおくれました。いつも毎晩ゲームをお供させていただいている者です」


「あ。だからはじめましての気がしないのか」


「まあ、そうですね」


「あの。好きでした」


「いや。ゲームでしか会ったことのない人間に初手で告白するのは地雷過ぎます」


「ごめんなさい」


 あああ。勢いで告白したら秒で振られた。


「で、なぜ病院?」


「あなたは、どうやら玄関で倒れたときに鼻血を出して。で、そのまま這ってまわったらしくて。簡単に言うと失血ですね」


「はなぢ?」


「そうです。はなぢ。はなぢで死にかけるひとはじめて見ました」


「たすけて、くれたん、ですか?」


「たまたま、隣の部屋なので」


「なんで隣の部屋なのに。え。隣の部屋なのに。わたし。知らなかった。ええ。うそ」


「まあ、とりあえず休んでください」


「はながかゆいです」


「ここですか?」


「あっそこです。きもちいいです」

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