第2話路地裏の少女

手錠の擦れる音で目が覚めた。 

上半身をベッドからゆっくりと起こして横を見てみると、ジェットのやつがまだ安らかな表情で眠っていた。

昨日は2連戦していたから疲れているのだろう。

それにしても、いつか戦うかもしれない者と一緒の部屋にするなんて、上の奴らは相変わらず趣味が悪い。

視線に気づいたのか、ジェットが目を覚ました。

俺の同じ様に上半身をゆっくり起こし、寝ぼけ眼を擦り、俺の方を向いた。

「はぁ~……おはようコウタロウ…」

大きな欠伸を付きつつ、ジェットは気の抜けた挨拶をする。

「おはようジェット。早速だけど、今日の朝食は俺一緒にいけないから」

ジェットは少しだけ目を見張った。

「んぁ?今日は外出するのか?闘技場のエース様は外出を自由に決めれて羨ましいな!」

「ストレス解消に街をブラブラしたくて……ていうかそんなに外出したいなら、上の連中に頼んで連続マッチ組んでもらえば良いだろう」

「お前みたいに一日に何回も殺し合いなんかしてたら、命がいくつあっても足りねぇよ」

牢の入り口から、ガシャン!と音が鳴った。

俺たちを迎えに来た兵士が鍵を開けたのだ。

「お前ら!早く外に出ろ!朝食の時間だ!」

俺たちは、ヤレヤレといった具合に牢から出た。

「兵士さん、今日外出てもいいですか?」

「ん?今日は外の気分なのか?朝食が無駄になってしまうな。まぁいい、金はいるか?」

「ご飯を食べたいので、少しください」

「分かった、用意させよう。おい!ジェットはそのまま食堂に向かえ!」

「へいへい、コウタロウ!土産頼んだぞ~」

ジェットは手をヒラヒラと振って、一人で食堂へ歩いていった。

「ということで兵士さん、少し多めにくれませんか?」

「全く……まぁいい。お前のおかげでこの闘技場は賑わっているようなものだしな。出口で待っていてくれ」

そう言うと、兵士は俺に鍵を渡して何処かへ走っていった。

俺は兵士に言われた通りに、出口に向かった。

観客用の大きな通路の横にあるドアを開け、石壁の細い道を進むと、奴隷剣闘士用の出入り口がある。そこにも鉄格子があり、兵士が持っている鍵がないと外出できない。

鍵を開け、しばらく待っていると先程何処かに行った兵士が走ってきた。

「ほら、銀貨3枚だ。あと、どれくらい外出するんだ?」

「そうですね……ブラブラしたいので、夕方頃まで帰れないと思います」

「わかった、報告しておく、鍵を返してくれ」

俺は鍵を兵士に投げた。兵士は鍵をキャッチすると、鉄格子を閉めて戻っていった。

俺は兵士の姿が見えなくなったのを確認し、ゆっくりとあるき出した。

たまにこうやって外出するが、特にすることが思い浮かばない。

外に出ると、いろんな事が頭をよぎり、あっという間に時間が過ぎてしまう。

肉の感触や、今まで殺した連中の悲鳴が、突然思い出される。

そして思い出されはするが、それになんの罪悪感も感じてない自分がいることに少しの恐怖を覚える。

それが、おれが外出時に考える事。

それからブラブラと歩いていると、不意に路地裏から強圧的で野太い声が響いてきた。

そして、気まぐれなのか、いつもなら面倒事を嫌う俺は無意識に路地裏へと歩いていった。

路地に入り、声のする方に歩いていくと、

一人の俯いた少女を3人の男が囲み、何やら怒鳴り散らしていた。

いつもの俺なら、そんなの放っておく、面倒事に巻き込まれたくは無いからな。

だが、何故かその時の俺は、何かがおかしかった。

「おいお前ら!」

俺の声に反応し、男たちは怒鳴るのを辞め同時に俺の方を向いた。

そして、先程まで俯いた少女が、顔を上げた。

少女は、一瞬放心して仕舞うほど、美しい顔をしていた。






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奴隷剣闘士の俺が王女様に求婚されました!? 白鷺人和 @taketowa

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