ここはとあるレストラン

Restaurant G.A

　金髪のウェイトレスさんが来たので注文を頼んだ。

「この『先日第一子の生まれて幸せモード全開だが最初の頃は奥さんと牛の名前を呼び間違えて浮気を疑われ離婚の危機にも陥ったがそんな時期を乗り越えて今では「私より長い時間一緒に過ごしているものね」と理解してくれた牛一筋の吉田が手塩にかけて育てた飛騨牛のもも肉　フランボワーズソースがけ』ください」

「すいません吉田さん第二子が生まれそうで忙しくって」

「それ人間？　牛？　どっち？　てか吉田関係なくない！？」

　水色の髪をした小柄なウェイトレスさんが来たので注文を頼んだ。

「この『世界中の人間を花粉症にするため活動する悪の組織【ずびずびー】とワンワンパニックで決着をつけるべく綿菓子の雲に乗り込んだところで目が覚めたシェフ斎藤のひんやりビシソワーズ　ミントを添えて』ください」

「すいません斎藤はタバコ休憩中でして」

「メルヘンチックな夢から唐突な現実！」

　ピンク髪のウェイトレスさんが来たので注文を頼んだ。

「この『先日携帯電話代を滞納して止められたけど通知が一切来なくて気付かず「俺友達居ないんだ」という事実に気付いてしまったパティシエ五十嵐による苺のミルフィーユ』ください」

「すいません五十嵐は心の傷病休暇中でして」

「俺が友達になるから早く復帰して五十嵐さん！」

　薄緑色で長い髪の小柄なウェイトレスさんが来たので注文を頼んだ。

「この『「ピザじゃなくてピッツァです！」のマネで「バニラじゃなくてヴァニラです！」と某芸人風に言うのが口癖のアルバイター原田お手製シロップ付きグラノーラパンケーキ　添加物不使用・バニラシロップ抜き可』ください」

「すいませんシロップに添加物が入っていて原田はその対応に追われております」

「そんなんだからアルバイトなんだよ原田！　結局最後バニラに戻ってるし！」

　赤髪でメガネの似合うウェイトレスさんが来たので注文を頼んだ。

「この『マルチーズを食べ物だと思って「美味しそう～」と言って周囲にドン引きされたことを未だに思い出してはベッドの上で足をバタバタさせながら枕に顔を埋める日々を送るバーテンダー吉岡が選ぶシュトーレンに一番合う紅茶　ニルギリ』ください」

「すいません吉岡はインドへ自分探しの旅に出ておりまして」

「黒歴史増えるだけだぞポカホンタス！　まずお前に必要なのは一般常識だ！」

　最後に渋い中年ウェイターを呼び止めた。

「水ください」

「かしこまりました」

「水の量、多っ」