自分の弱さを認めたくなかった。
今回は少しフェイクが入ります。全部をそのまま書くと個人が特定されるだけでなく勤務先に迷惑がかかりそうだからです。いや、このエッセイを書いている時点で元勤務先なんですけど。
ここ最近の私は少し難しい仕事に挑戦していました。細かな内容は記載できません。ここから曖昧な表現しますのでご了承を。
この二か月くらいかな? 私は機械にセットするカートリッジ状になった材料を交換のする作業工程手順書を作っていました。空になったカートリッジを新しいカートリッジに交換する的な作業です。
言っておくけどインクカートリッジみたいにポンと付くもんじゃないぞ。二百キロ以上あるしガチャンとかパチンと繋がるものでもないぞ。
作業に慣れた先輩たちは大よそ一時間で作業完了する感じです。ところが私が作業すると二時間半から三時間半かかってしまいます。
当然ですが材料カートリッジの交換時間が長引くのは生産スケジュールの狂いにつながります。ところが必死になって作業しても作業時間は縮まらない。ではどうして時間がかかるのかと問われても正確な理由がわからない。
理由は色々あると思うんです。何年も何回も作業して手順を覚えている作業者と、この二か月くらいで作業を覚えて手順書を見ながら作業する私とでは手際とか違うと思うんです。材料によっては製造時に大量のホコリを出す物もありますし、その掃除で時間がかかる物だってあります。
何と言っても困ったのが『各作業者の考え方や作業の違い』です。例えばですがこんな感じ。私が作業していると不慣れなせいもあって助言をくださるのですがこれが非常に厄介でした。
A:ここは〇〇で作業してください
B:ここは〇〇じゃなくて××で作業する方が早い
C:ここは××に△△して作業すると楽
まぁここまでなら助言として受け取るんですが、ここからが問題。良かれと思って助言してくれるのだと思って意見を取り入れました。で、同じ作業をしていると……。
A:どうして△△の工程が入ってるの、ここは〇〇って教えたでしょ? △△なんてしたら時間を食うでしょ?
B:ここは××で作業する方が早いって言ったでしょ? どうして○○に戻した?
C:どうして△△をしないんですか? だから作業が遅いんです。
……と、こんな感じで固まりかけた手順や方法がしっちゃかめっちゃかになる訳です。となれば生産予定は狂るうわけでして……。
社長:何度も作業しているのにどうして早くできる様にならないの! 努力不足! 気持ちがこもっていない! 覚える気が無い! 手順書を見て作業して!
その手順書だって指摘されるたびに毎回毎回書き直して、この二か月は家へ持ち帰ってけっこう遅い時間まで手直ししているわけです。すると睡眠時間が圧迫され、疲れがとれずに体が上手く動かず頭もボンヤリ。すると作業も思うように進まなくなります。
もう精神的に限界です。そんなある日Aさんが「作業手順が有っているか通しでテストをする」と言いだしました。
A:〇〇の掃除はどこからしますか?
京:手前からエアブローして奥側に向かってです。
A:違います、奥側をエアブローしてから手前を掃除です
京:それでは手前側を掃除したら奥側に汚れが飛びませんか?
A:手前側の汚れなんて微々たるものです。どうして反対で掃除するんですか?
京:手前側の汚れが奥側に付いてしまうからです。
A:そんな掃除方法は教えていません。他の人に聞いて確認してください。そんないい加減な人には作業をしてもらいません。今まで何をやっていたんですかっ?!
落ちこみながらも工場長やもう一人の作業員に聞きましたよ。そしたら私の手順で合っていました。どう考えてもAさんの掃除方法は理屈が合いません。
二人とも『普通は手前から掃除して奥でしょ? 今さら何を言ってるの?』ですって。
説明しても聞いてくれない、確認すれば違っている。ずっとこれの繰り返し。「この会社はそういう会社なんやな」と思うと何もかも嫌になりました。そんな訳でして、この何か月か張りつめていた気持ちがプツンと切れました。
帰りに私物を全部車に放り込み、健康保険所と備品を置いて帰宅途中に『もう無理です』と職場LINEグループにメッセージを入れて帰宅しました。
ここまでやってやっとこさ職場の面々は私が限界まで追い詰められていると解ったんです。
これが先週土曜日のお話。何だかんだで週明けに退職手続きをしました。職場の姐さん達とは普通にお別れの挨拶が出来たんですが、同僚A・Bに「この二か月間、作業手順書を書いて必死で覚えようとしたけど無理だった。辛かった」と伝えた時は泣いてしまいました。
私って、もっと強くて器用な人間やと思ってたんやけどなぁ……。
認めたくなかったけど、弱い奴やね。
しばらくはプレスカブの修理やメダカの世話をして心を癒します。残念ですが退職したので『職場の姐さん』は続けられなくなりました。
精神的にこたえたので『日々これ京丁椎』も終わりって事で。
日々これ京丁椎 京丁椎 @kogannokaze1976
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます