第2話 新しい時代
CGが街中に現れ始めてから早4年―ようやく施行されるこの法律によって、まず私たち生身の人間とCGの人間がAIによって自動で区別され、CGが利用できる施設と利用できない施設が分けられる。
これで映画館のスクリーンの前にCGが現れて世界観がめちゃくちゃになることも、カフェにCGが立ち入ってしまい何も食べられなくてかわいそうなことになることもなくなる。(これはお店の側がCGデータでメニューを用意してくれることもあった)
同時に私たちはあらゆる場所に出入りする権利を得られ、今までCGに占拠されていた場所も含め、より自由に利用できるようになる。つまりは、元通りになるだけなのだが。
またそれぞれにシリアルナンバーが割り振られ、私たちにはGPSや行動履歴からおすすめのお店や商品、通勤通学ルート、などあらゆる情報が自動で表示されるようになる。
CGはCGで、いろんな情報やアバターを受け取れたりするらしい。情報を受け取ると言っても、「中の人」が受け取るだけだけど。
私は画面を開く。
画面の中にはいろいろな人たちの声。「やっと実装されるんだなあ」「不安でしかない」「そもそもいる?」「やっぱりCGは不要」「俺たちが二次元に行けばよかったんだよ」「CGはいるでしょ」「焼肉食いたい」「食べに行く?」「星那のライブ最高だった!」
(どうなるんだろう)
星那は画面を閉じ、少し息をついた。
(楽しみだけど)
CGで造られたキャラクターたちが3次元に現れ、私たちと同じ世界に存在するようになる。
このことは多くの人に、むしろ2次元と3次元の差を実感させる結果となった。
私たちは想像以上に人間である以前に生き物であり、
「生きている人間」である私たちの特権はあまりに大きい。それに対してCGたちはあくまで「人間のような映像」として扱われた。
それは一部の人から言わせてみれば「制度が整っていないから」であり、研究者から言わせてみれば「技術が進歩していないから」であり、多くの一般人からしてみれば「キャラクターなのだから当たり前」なのであった。
しばらくして楽屋のドアがノックされ、マネージャーが顔をのぞかせた。
「星那ちゃん、準備できた?」
「はい、今行きます!」
とりあえず今日は打ち上げ行って、終わったらゆっくり寝よう…
そう思いながら星那はまた服装を整え、楽屋の外へ向かうのだった。
二次元ぶりのディストピア @mintleaf23
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