一八、斥候
「…」
「山っ!」と声を掛け、銃口を向ける。
「かっ、川」と、オンナ青鬼が答える。
「ミュゥラン、返答が遅いぞっ! 次はないぞっ!」
「承知しましたっ!」
ミュゥランと合流して彼女と馬に休みを取らせて、無人街へ向けて開拓水道の底を進み始める。ミュゥランによると、無人街まで。
無人街まで残り四分の一を切った辺りから、時折り彼女は北洲との境界側の土手を上がり様子を窺う。何度目かのミュゥランの目視による索敵で、無人街の姿が現れる。
「ヒトロク殿、棄て去られた街が見えます」
俺は土手を登り、ミュゥランと同じように身を屈めて土手の上部から辺りを覗く。陽の傾きは大夫大きくなり、赤みが増している。俺は背嚢から双眼鏡を取り出し、無人街の様子を窺う。と、ミュゥランが声をおとして俺に言う。
「ヒトロク殿、身を隠されよ」と、ミュゥランの声に俺は反射的に土手の陰へ身を沈める。
「どうした?」
「越境盗賊どもです。どうやら四騎程の斥候の様です」と、ミュゥラン。顔ちけぇよ。
俺もその四騎を確認する。前に倒した盗賊たちと同じ風体の男たちが、荒れた平地を騎馬で駆け抜ける。向かう先は無人街の様だ。
「残りの盗賊たちはぁ?」
「まだ見えませんぬ、街にやってくるのは陽の落ちる頃合いかと」
「陽のあるうちに、街と周囲の偵察かぁ?」
「おそらく。奴ら開拓水道に入れば、東に送った追捕衆の足跡に気づくかと」
「だろうな。しかし、奴らはここで擂り潰す。東へ向かった追っ手に気づいたところで、問題は無いだろう。奴らの馬も一日駆け続ければ、ここらで休む必要があるだろぉ?」
ミュゥランも同意の頷きを俺に向ける。暫し四騎の盗賊の動きを見張る。盗賊たちが街に入る。この間に俺たちは街に面する開拓水道の土手から対岸の土手の陰に移動し、各々の
暫く無人街を監視していると、漸く二騎の盗賊が街から出てくる。開拓水道に向ってくる。その間に俺たちは土手を下り、反対側の土手の陰に身を潜める。
二騎とも土手を駆け上がり開拓水道の底へ入ってくる。二人の盗賊は馬から降りると、地面の足跡を探ている様子だ。暫く地面の検分をしてから、再び馬に乗って街へ向かって土手を登り始める。
俺たちは身を潜めていた土手を越え、開拓水道を横切って街に面する土手の陰から二騎の盗賊の動きを追う。すると一騎は街の中へ入り、もう一騎は最初に街に向かって来た道を戻って行く。
「一騎は後続の盗賊集団へ東に向かう追っ手の様子を知らせに行くようだな。もうしばらくすると陽が沈むな」
「その様ですね。陽が沈む前に我々も街に入り、奴らの動きを探りましょう」
「そうだな。奴らの今夜の寝床を確かめよう」
知らない土地で俺は。素体ヒト・ロク アルヒト @nariwara_arihiro
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