第3話 残りの資料の行方

 ★BC20000年古代、○○〇(場所名・村)。

 村に来てすぐ、猫に似た鳴き声が聞こえる。


「ミギャァァァ」

「なんの声だ?」


 頭上から聞こえた為、上を見上げるアルド。姿は見えないが、地面に大きな鳥の影が映って通り過ぎた。

 一枚の羽が空から降ってくる。アルドは落ちてきた羽を拾う。


(速くてよく見えなかったが、光ってたな)


 正面に視線を戻して行動開始(操作可能)。アルドは村の中を移動する。


「すみません、少し聞いてもいいか」

「何かしら」


 若い女性に話しかけ、探し物のことを伝えた。

 女性は眉間にシワを寄せて思案する。


「数日前、火山の方角に何か落ちたみたいだったけど関係あるかな」

「それは紙の束だったか?」

「さぁ、よく見えなかったから」

「わかった、ありがとう」


 村を走り回り、他の人にも話しかける。次に声をかけたのは反対方向の端っこにいた男性。


「変な影なら俺も見たよ。途中で2つに分かれたのをよく覚えてるぞ」

「二か所に落ちたのか。どこに落ちたのか教えてくれ」

「生憎、仕事の途中だったんでね。最後まで見てないんだ、悪いな」

「そうか」


 話を切り上げて次を探す。聞き込みを続け、村の入り口付近にいた子供が知っていた。


「えっとね。あっちに落ちたよ」


 子供が平原のほうを指さす。


「もう一つは平原か。ありがとう」

「ううん。どういたしまして」


 謎の物体が落ちた場所が特定できた。早速行ってみることにする。



 ★BC20000年古代、山岳。

 村人の目撃情報をもとに火山近くの山岳を訪れた。


「まずはここら辺を探して見よう」

(運悪く溶岩に落ちて燃えてないといいけど……)


 火山に落ちていたら回収が困難になる。できればここで見つけたいものだ。

 モンスターが徘徊する山岳の道を進む。


「まさかこの中じゃないだろうな」


 突き当りに湧き出でる熱気が漂う池(泉かも)を覗き込んだ。この中に落ちたのなら回収のしようがないぞ。


「どうするかな」

「あら、こんな所で何してるの」

「ん?」


 アルドは振り返る。振り返った先には一人の娘が立っていた。


「君こそ一人で何してるんだ。モンスターが徘徊していて危険だぞ」

「大丈夫よ。精霊様のご加護があるし、安全な抜け道を知ってるから」

「それで」

「日課のお祈りに来たの。貴方は?」

「探し物をしてるんだ。この辺りに数日前、何かが落下したと聞いて」

「それだったら、もっと向こうのほうだったと思うわ」


 娘が池とは反対方向を示して言った。


「向こうのほうだったんだな。ありがとう」

「いいえ。でもあっちのほうは、危険なモンスターがいるから気を付けてね」

「ああ」


 娘と別れ、彼女が示した方角へ行く。

 強力な敵=FEARの気配を近くに感じる道の中程に、目的の物が散らばっていた。2,3枚の紙だ。1つずつ回収していく。


「これで山岳に落ちた分は全部か。次は平原に行かないとな」


 アルドは拾った資料をしまって歩き出す。



 ★BC20000年古代、平原。

 残り僅かな資料を求めて平原を訪れる。こちらは目的の品が燃えてなくなる心配はないだろう。


「だが、モンスターがうっかりという可能性もある。急いで探さないと」


 アルドは恐竜が走り回る草の上を走り回った。草をかき分けて隅々まで探索。


「ニャー」

「猫? いったいどこから」

「ニャー、ニャー」

「向こうから聞こえる」


 平原にはどういう訳か猫もうろついている。

 でも今回は少し様子が違った。見える範囲に猫の姿はない。猫の声が聞こえるほうへアルドは足を進める。


「ニャー」

「いた。……って」


 アルドは驚愕した。目の前に、紙と戯れている猫が数匹いる。白猫、黒猫、三毛と毛色は様々だ。

 アルドは急いで駆け寄ろうとするが、猫が立ちはだかり威嚇した。今にも飛びかかりそう。


「なあ、その紙返してくれないか? 大事な物なんだ」

「フシャー!!」

「た、頼むから引っ掻くなよ」


 刺激しないよう静かに近づき膝を折る。


(お気に入りの玩具を取り上げているみたいで気が引けるな)

「本当にごめんな」

「ニギャァ」

「わあっ、イタタ……」


 一匹に思いきり引っかかれる。他の猫は憶病だったのか、アルドが近づくと逃げて行ってしまった。

 アルドは散らばった資料を拾う。しかし、最後の一枚を拾おうとした時のことだ。


「ミギャァァァ」

「またあの声だ」

(いったい何の声なんだ?)


 周囲に顔を向けるが何もいない。今回は上空から影も差さなかった。

 気を取り直して資料を拾うと視線を戻すと、そこに資料の姿はなくなっていた。


「今の一瞬に何が起きたんだ。まだ近くにある筈……」

「ガアァァァァ!!」


 背後からモンスターの声。アルドは咄嗟に振り返る。

 植物の姿をした大きなモンスターがいた。長い蔦をウネウネと動かしている。蔦のひとつに例の資料が絡まっていた。


「さっきは気づかなかったが、こいつがいたのか」

「ガアァァァ」

「悪いが、そいつは返してもらうぞ!」


 アルドは剣を構えて植物のモンスターに向かっていく。


(戦闘は中略)


「とどめだ」


 モンスターを無事に撃破。剣をしまい、奴がいた場所に歩み寄る。膝を折って、手探りで調べ資料を回収した。

 アルドは今までで集めた資料を数える。


「よし、全部そろったかな」

(後は万年筆を探すだけだ)


 アルドは研究資料をすべて集めた。

 きちんとまとめて、失くさないようにしまう。



 ★BC20000年古代、○○○(場所名・村)の入り口付近。

 情報を整理する為に、いったん村に来たアルド。モンスターが徘徊する所で長々と考える訳にはいかないからだ。


「残るは万年筆だ。リィカ、映像の中でまだ行っていない場所はどこだ?」

「ハイ。解析シた情報によルト、次の目的地ハAD300年の現代ダト推測されマス」

「詳しい場所は現代に行ってから聞くよ」

「了解シました」


 話が終わり、次の場所へ移動しようとした時。一人の男がアルドにぶつかる。


「おっと、悪いね」

「いや……」


 手短に謝罪し、男は少し速足で立ち去った。あっという間に男の姿は見えなくなる。


「先程の方、若干心拍数が早かったヨウです。慌てテいたのでショウか」

「何だか様子がおかしかったな」


 嫌な予感がしたのと、不安を感じてアルドは持ち物を確認した。


「あれ、財布と研究資料がない」

(他にもいくつか無くなっている)

「でハ、先程の奴は泥棒……スリですか」

「くそ。急いで追いかけるぞ」


 とんでもないことになってしまった。

 アルドは先程すれ違った男が去って行った方向に走り出す。



 ★BC20000年古代、○○○(場所名・村)の通り。

 泥棒を追いかけているアルドは、周囲の人から目撃情報を集めている。


「こっちに慌てた様子の男が来なかったか?」

「いや、来てないよ」

「そうか」


 山岳方面に続く通りを歩いている青年に尋ねた。


(山岳のほうには行っていないようだ)


 続いてアルドは武器屋の前で悩む厳つい男に尋ねる。


「なぁ、慌てた様子の男を見掛けなかったかな」

「ソイツなら、僕にぶつかった後湖道のほうに行ったけど」

「ありがとう。……ところで、何か困りごとでも?」

「ああ。武器を新調しようと思ってるんだが、何がいいか迷ってるんだ」

「そ、そうか。じっくり選べよ」

「もちろん、そうさせて貰うさ」


 手助けする必要がなさそうだったので先を急ぐ事にした。今も悩み続ける男と別れて、アルドは湖道へと足を踏み入れる。



 ★BC20000年古代、湖道。

 足を踏み入れてすぐ、遠くのほうから悲鳴が響いた。


「助けてくれ――!!」

「今の声、スリをした男の声だ」


 急いで現場に急行する。

 アルドが向かった先には、ぶつかってきた男の他に仲間が一人いた。モンスターに襲われている。


「くそぉ、今日はついてないぜ」

「た、助けて……」

「放ってはおけない。今、助けるぞ」


 アルドは剣を抜き、二人の男の前に飛び出す。背後に庇ってモンスターと対峙した。男達はすっかり及び腰だ。

 モンスターはよく見かける雑魚である。


(戦闘は省略)


 モンスターを無事に撃退し、アルドは助けた男達を振り返った。男達は情けなく尻もちをつきこちらを見上げている。


「さて、取った物を返して貰おう」

「は、はいぃ」


 男達は口を揃えて返事をする。声音が裏返っており、ごつい容姿の割に中身は相当の小心者のようだった。


「これに懲りて悪さは止めるんだな」

「すみませんでした」


 男達が勢いよく頭を下げ、愚痴をこぼしながら村に引き返して行く。


「たく、変な格好してるから珍しいもん持ってると思ったのによ」

「ホント大した物持ってなかったすね。……何で上手くいかないんだろうな」

 (あいつ等、ちゃんと反省しているといいけど)


 アルドは、彼らがまた悪さをしないことを祈りながらその場を後にした。

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