輝夜姫・後編

5、四人目・車持皇子くらもちのみこ


四人目の車持皇子くらもちのみこは、対人恐怖症たいじんきょうふしょうで長年引きこもり生活を送っておりました。

しかし、よめができれば変わるかも知れないという両親の思いを受けて、今回、勇気を出してお見合いを承諾しょうだくしたのでした。

はい、ご想像の通り、彼は「ニート」の愛称で呼ばせていただきましょう。


ニート「……」

輝夜 「……」


見合いの席で、輝夜とニートは二人きりになると、互いに六時間ほどだまり込んでおりました。

ニートは、対人恐怖症以前に、初めて見る母親以外の女性を見るのが恥ずかしく、ずっと、うつむいております。

輝夜は、腕組みした姿勢のまま寝ておりました。


突然、輝夜の鼻提灯はなちょうちんが破裂し、輝夜は目を覚ましました。


輝夜 「あら、もうこんな時間?……車持皇子さん、何かしゃべったら……?」


ニートは、チラリと輝夜を見上げました。しかし、直ぐに顔を赤らめて、うつむいてしまいます。


ニート「あ……その……」

輝夜 「あんだって?聞こえないわよ!」


ニートは、うつむいたまま勇気を振り絞って声を上げました。


ニート「ぼ……ボク……お、お母さん以外の女の人……初めて見ました」


お見合いを切っ掛けに自分は変わるんだと決意してきたのです。ニートは下腹部に力を込めてさらに続けます。


ニート「母さん以外の女の人って……眉毛がつながってて、無精ぶしょうヒゲも生えてるものなんですね……知りませんでした」


ワイルドな美しさを持つ輝夜は、男性ホルモンがちょっぴり多い為、少しばかりヒゲがありました。


輝夜 「あんたは、声もチンコも小さそうね」

ニート「か、輝夜さんは、声も野太くて、お、男っらしいですね……」

輝夜 「あんたは、童貞ポイっつーか、百%童貞ね」


言葉少なではありましたが、二人は互いにめ合いました。


ニートはしばらく沈黙ちんもくすると、思い切って立ち上がりました。そして


ニート「か、輝夜さん!け、結婚して下さい!」


引きこもり歴しかないニートは、手順が分からず、いきなり求婚してしまいました。


輝夜 「プレゼントさえくれるなら、別にいいわよ」

ニート「ほ、本当ですか?が、頑張がんばって用意します!」


輝夜は、リストが書かれた用紙を差し出しました。


輝夜 「東京ビッグサイトのコミケで、知り合いの作家さんたちが本出すから、買ってきてちょうだい」


ニートはリストに目を通すと、唖然あぜんとしました。

本のタイトルは、どれもドギツイBL本で、ここに書くのもはばかるものばかりです。


輝夜「ちなみに、全員女性作家だから。買う時は、女の売り子さんの前で、周りに聞こえるように大きな声でタイトルを読み上げて買うのよ」


何という事でしょう。

お見合いを乗り越えるべき試練と覚悟してはいました。しかし、その試練はエベレストのいただきよりも高くけわしかったのです。

ニートは、リストを握りしめると、ぶるぶると震えだしました。

お見合いを無かった事にして帰ろう……そう思った時、我が子の行く末を心配する母の顔が脳裏のうりによぎりました。

ニートは、震える拳を抑え、しっかりとかぶりを上げました。

乗り越えるべき試練がいかに高くとも、母の愛はエベレストをも飲み込むマリアナ海溝かいこうのごとく深いのです。


ニート「分かりました。買ってきます!」


ニートは、リストをふところにしまうと、駆けだして行きました。


輝夜 (買えるもんなら買ってみろや、童貞が!)


ニートはみやこ大路おおじに飛び出すと、道行く人に、東京ビッグサイトの場所を聞きました。


ニート「あの……その……」


しかし、小声でボソボソと話すニートの声に、誰も耳を傾けてはくれません。

みんなに無視され続け、既に日がれ落ちようとした時、ニートは人生最大の勇気を振り絞って叫びました!


ニート「だ、誰か!東京ビッグサイトの場所を教えて下さい!!」


家路いえじにつこうとしていた人たちが、一斉に振り返りました。

みながニートに注目する中、ゆっくりと、一人の老人が進み出てきました。


老人 「お前さん、もしかして、コミケに行きたいのかね?」

ニート「は、はい!ご存じなんですか?」


老人は、うなずきました。


老人 「ワシも若い頃はハッチャけとってな。プリキュアの女装コスで参加したもんじゃ。あれは42歳の時じゃったかのう……」

ニート「ば、場所を教えて下さい!」


老人は、静かに首を横に振りました。


老人 「残念ながら、東京ビッグサイトで初めてコミケが開催されるのは、今から1300年後の1996年からじゃ。ワシのように、長生きせんと無理じゃのう」

ニート「そ、そんな……」


老人の言葉に、ニートは途方にくれてしまいました。



黄昏たそがれの中、ニートは浜辺に座り込み、海をながめていました。

輝夜との約束を守れず、母親にも合わせる顔がありません。

どうすれば良いのでしょうか?


ふと、ニートの横に一匹の亀が腰を下ろしました。

しかし、よく見るとそれは亀ではなく、なぜか亀の甲羅こうら背負せおったハゲたオッサンでした。


亀のおっさん「坊主、しょぼくれてどないした?」


ニートは事情を説明しました。


亀のおっさん「なんじゃ、そんな事で悩んどるんか。よし、ワシが解決したろう!」

ニート   「解決策があるんですか?」

亀のおっさん「ワシはこう見えても竜宮城の亀じゃ。竜宮城では時間の流れが違ってな……」


おっさんの話では、竜宮城に一日滞在するごとに地上では百年の月日が経つというのです。

過去には、これを利用して、浦島太郎という男が、300年の定期預金を組んで大儲おおもうけしたというではありませんか。


ニート   「ぜ、ぜひとも竜宮城に連れて行ってください!」


ニートの願いに、おっさんは沖に向って合図を送りました。ほどなくして、ボロボロの民間船が近づいてきました。


亀のおっさん「さあ、これが海底の楽園・竜宮城行きの船や。遠慮なく乗れや」

ニート   「あ、ありがとうございます!」


民間船は、なぜか国籍名の部分が塗りつぶされていました。不思議な事に船員たちは覆面ふくめんをしていました。しかし、世間知らずなニートは違和感をおぼえませんでした。


亀のおっさん「ほんじゃ出航や!地上の楽園・北朝……竜宮城に!」



……車持皇子くらもちのみこ脱落



8、帝



輝夜  「でさ……やっぱり新婚旅行はグアムがいいと思うのよね」

石上麻呂いそのかみのまろ「……なんで新婚旅行の話から入ってんだよ」


最後のお見合い相手は、輝夜の大本命・石上麻呂いそのかみのまろです。

二人の机の前には、旅行パンフレットが広げてありました。


石上麻呂いそのかみのまろ「オレにも課題だせや!」

輝夜  「ああ、ごめんなさい。大切な事を忘れてたわ」


輝夜は一枚の用紙を机におきました。


輝夜  「ここにハンコ押すだけでいいから」


用紙には『婚姻届』と書かれてありました。石上麻呂いそのかみのまろは黙って破り捨てました。



かくして、多少の犠牲を出しながらも、輝夜は作戦通りお見合いを破綻はたんさせる事に成功いたしました。石上麻呂いそのかみのまろが断ったのは誤算でしたが。



しかし、人生何があるか分かったものではありません。

その後も、危ない同人を描きながら、石上麻呂いそのかみのまろにセクハラを続ける日々を送っていた輝夜の身に青天の霹靂せいてんのへきれきが起こったのです。


ある日の朝、喧騒けんそうに目を覚ました輝夜は、何事かと玄関に飛び出しました。

見れば一台の牛車を前に、両親は複数の役人たちに取り囲まれているではありませんか。


役人  「勅命ちょくめいである!竹取家の戸主および妻女を内裏だいりに引っ立てる!」


訳が分からず両親が牛車に詰め込まれる中、輝夜はボケっとながめておりました。


近所の人「輝夜ちゃん、帝のご命令だなんて、何があったの!?」


かたわらの近所の人が心配していましたが、輝夜は鼻をほじりながら


輝夜  「さあ?食い逃げでもしたんじゃない?」


と言い放つと、二度寝をしに部屋に戻ってしまいました。



役人たちは検非違使けびいし(警察)ではなく、朝廷がつかわした使者でした。

ゲテモノ好きで知られる時の帝は、輝夜の噂を耳に止めると、ぜひ自分の側室に迎えようと考えました。

しかし、既に多くの求婚者たちが失敗していた為、輝夜が拒否せぬよう、先に両親を拉致らちしたのです。


輝夜の両親が解放され、家に戻ってきたのは一か月も後の事でした。

ひと月ぶりに見る両親の姿は、すっかりと変わり果てておりました。

出迎えた輝夜の前で、両親は泣き崩れました。


輝夜の父「輝夜……許しておくれ……」

輝夜の母「お前には、好きな人と結婚して欲しかったのに……」 

輝夜の父「拷問ごうもんに耐えられず……帝に輿入こしいれする事を承知してしもうたのじゃ……」


両親は、互いに手を取り合い、おいおいと慟哭どうこくしました。

輝夜は、冷めた目で両親を見つめると、ポツリと申します。


輝夜 「で?いくら、もらったわけ?」


娘の冷たい声に両親は泣き止むと、互いに顔を見合わせて小首こくびをかしげました。


輝夜の父「さて、何の事じゃろうか、母さん?」

輝夜の母「いくらって、タラの子供の事かしらね?」


とぼける両親に、輝夜は深々と溜息をつきました。


輝夜 「じゃあ、なんでそんな変わり果てた姿になってるワケ?」


日頃の不摂生ふせっせいでやせ細り、顔色も良くなかった父。しかし、戻ってきた姿は健康的に肥え、血色も良くなっておりました。

母にいたっては、三段腹が消え、スタイルまで良くなっております。


輝夜 「んで、連行された時と服も違うけど?」


連行された時はあさのボロ着だった父の服は、アルマーニのスーツに変わっておりました。母の方はシャネルのドレスにミンクのコートまで羽織はおっております。

しかも、二人の手指には、まばゆいばかりのダイヤモンドがはめられていました。

どうみても、両親は買収されつくしておりました。


輝夜の父「これは……ほれ、石作皇子いしづくりのみこさんが行方不明になったじゃろ?代わりに親父さんがユーチューバーをやっとるんじゃが、その時の『わらしべ長者企画』で……」

輝夜  「何と交換して行ったのよ?」


輝夜の父「ポケットに輪ゴムが入っとったから、それを通りがかりの富豪に渡したら、このスーツをのう」

輝夜  「なんで一発目で、輪ゴムがアルマーニになんのよ!」


あきれる輝夜に対して、泣き崩れていた母は立ち上がりました。バッチリとメイクまで決めた顔で輝夜をにらみます。


輝夜の母「輝夜、いい加減にしなさい!……私たちが、この一か月の間……どんな酷い拷問を受けてたと思ってるの!」


輝夜の父も、うなずきました。


輝夜の父「年老いたワシらに、役人どもは残酷な事をしよったんじゃ!」

輝夜  「どんな事よ?」

輝夜の父「高血圧だというとるのに、毎日毎日……」


つらい日々を思い出したのか、父は体を震わせました。


輝夜の父「松阪牛だの、フォアグラだの、ドンペリだの……強制的に飲めや歌えの大騒ぎをさせられ……どれほど辛く……楽しかった事か!」


母は突然コートと上着を脱ぎてました。そのボディには、かつての中年太りの面影は微塵みじんもありませんでした。


輝夜の母「私なんて、毎日毎日、走れだの、運動しろだの、炭水化物をひかえろだの強制されて……気づけばこんなスタイル抜群にされちゃったのよ!」

輝夜の父「そうじゃ、あのライザップとかいう恐ろしい拷問のせいで……母さんは心まで若返ってしまっての……」


父は、再びこぼれ落ちた涙をぬぐいました。


輝夜の父「毎晩、なかなか寝かせてくれんのじゃ……」


母も頭を抱えました。


輝夜の母「このままじゃ、弟か妹が増えて食費がかさみそうだわ……」


輝夜は無視して詰問を続けました。


輝夜  「で、現金は?もらってるんでしょ?」


両親は、再び顔を見合わせました。


輝夜の母「確かに帝は買収しようとしたわ。現金も渡された。でも、娘を金で売る訳ないじゃない!」

輝夜の父「そうじゃ、贈り物だけは受け取るが、現金まではいただけんと……」


輝夜  「返したの?」

輝夜の父「突き返す予定じゃったが、少し増やしてからでも遅くはないと思うてな……のう、母さん」


母は、うなずきました。


輝夜の母「ほら、この前、競馬の皐月賞さつきしょうあったでしょ。あれね、一番人気のオグリキャベツ以外は駄馬ダバばっかりだったのよ」

輝夜の父「あれだけ手堅てがたかったら、のう……」


輝夜の母「二位に十馬身ぐらい差を付けてブッチギリだったわよね」

輝夜の父「それがゴール直前で転倒してしまうとは……」

輝夜の母「人生、なにがあるか分からないものねえ……」


全額、競馬ですってしまったようです。


輝夜両親「という訳で輝夜。もらうもんもらった以上、輿入こしいれしておくれ」



9、月へ


内裏へ輿入れする前夜、輝夜は石上麻呂いそのかみのまろと共に入念に計画を練っておりました。


輝夜 「じゃあ、もう一度、手順を説明するわよ」


計画書を指さしながら、再確認してゆきます。


輝夜  「まず帝との初夜を迎える時、私は「恥ずかしいから電気を消して」とおねだりする」


輝夜  「灯りが消えた所で、帝が動けないように私がベアハッグをかます」


輝夜  「そのタイミングで庭に隠れていた麻呂タンが忍び寄り、後ろから帝の頭を棒で叩く」


輝夜  「帝が失神した所で、麻呂タンは強盗誘拐に見せかけて私を拉致」


輝夜  「んで、月まで駆け落ちすんのよ……OK?」


石上麻呂いそのかみのまろは、ずっと黙って輝夜の説明を聞いておりましたが


石上麻呂いそのかみのまろ「その計画には、致命的な問題が二つあるな……」

輝夜  「どんな問題よ?」


石上麻呂いそのかみのまろ「月に駆け落ちって……どうやって行くんだよ」


輝夜は心底あきれました。


輝夜  「もう……麻呂タンはお馬鹿ね。お月様って上の方にあるのよ」

輝夜  「まず麻呂タンが私を肩車して、肩車された私が、その状態で麻呂タンを肩車して、その麻呂タンがさらに私を肩車するって具合に、交互に肩車し続ければ、だんだん上へ上へと」

石上麻呂いそのかみのまろ「行けるか!」


輝夜  「もう、麻呂タンの意地悪。じゃあ、もう一つの問題はなによ?」

石上麻呂いそのかみのまろ「オレには何のメリットもないって事だ!」

輝夜  「私と駆け落ちして結婚できるのよ?」

石上麻呂いそのかみのまろ「メリットの頭に「デ」が付くだろうが!」


輝夜は舌打ちすると、自分のスマホをかざして見せました。そこには人物画のモデルになってもらうと称して、今まで撮りためた石上麻呂いそのかみのまろの恥ずかしい画像が大量に映っておりました。


輝夜  「これ流出させられるのと、取り合えず協力するのと、どっちがいいかしら?」



次の日、輝夜の家に牛車が迎えに来ました。輝夜と両親は、別れの挨拶あいさつを交わしました。

近所の人たちも、見送りにきています。


近所のおっさん「輝夜ちゃん、とうとう市場に出荷されるんやな」

近所のおばはん「動物園かも知れないわよ」


近所の人たちは勘違いしていました。

かくして、近所の人たちが歌う「ドナドナ」の曲に送られながら、輝夜は内裏へとおもむいたのでした。



輝夜が到着すると、まず婚礼の儀が始まる予定でしたが、


帝  「何事も、まずは楽しいことから始めなアカン」


と帝は面倒くさい事は後回しにして、いきなり初夜から始める事にしました。


おぼろ月夜の中、輝夜は、女官に帝の寝所へと導かれました。

寝所の内には、寝間着姿の帝が寝台に腰かけて待っておりました。

寝台は、今夜に備えて正倉院から引っ張り出してきた物です(マジで正倉院に納められてるよ)。


帝は、輝夜の姿を一目見るなり、溜息を付きました。

思わずうたを口ずさみます。


月隠れ

おぼろに見ゆる

輝きは

女性にょしょうしき

ゴリラなりけり


うたの意味は、「月が隠れても、輝夜の輝きが見える。その美しさはゴリラのようだ。女性にしとくにはもったいない」という意味です。


帝は上着を脱ぎ棄て、ついでかんむりも外しました。さらについでにヅラも外しました。

そう、時の帝はおハゲであらせられたのです。


輝夜も、返歌を返します。


もれ出づる

月に見まがう

輝きを

自ら放つ

とうとし頭


うたの意味は、「雲間から漏れ出た月明り。それと見間違うほどの輝きを自ら放つハゲ」という意味です。


帝は辛抱しんぼうたまらなくなり、輝夜に飛びつきました。


帝 「なんと、なんとワイルドな女子おなごじゃ!どうか、ワシを強く抱きしめておくれ!」


輝夜はガシッと帝を抱きしめました。そのまま寝所の窓の近くに移動します。庭園には、手はず通り、石上麻呂いそのかみのまろひそんでおりました。


輝夜「ああ……御所ごしょ様(天皇)。灯りの下ではお恥ずかしゅうございます。どうか……どうか部屋の電気を消して下さいませ」

帝 「ああ……輝夜よ、案ずるでない。奈良時代に電気は通っておらぬわ」


輝夜は、合図を送りました。石上麻呂いそのかみのまろが、忍び足で寝所に入ってきました。

輝夜は、「やれ」と帝を殴るようにジェスチャーを送りましたが、もちろん、石上麻呂いそのかみのまろは何もする気はありません。ちゃんと輝夜と帝が既成事実を作ってくれるのを見届けるつもりでした。

輝夜は何度も合図を送りましたが、石上麻呂いそのかみのまろは一切動こうとしません。


輝夜は舌打ちすると、帝を抱きしめる腕に力を込めました。


帝 「ああ……輝夜、ああ……もっと、もっと強く……」


バキバキと骨にヒビが入る音が鳴り、帝はそのまま失神してしまいました。

石上麻呂いそのかみのまろ、慌てて親指を立てました。


石上麻呂いそのかみのまろ「作戦通り!」

輝夜  「手順、一つ抜けてただろうが!」


いうやいなや、輝夜は石上麻呂いそのかみのまろの腹に当身あてみをくらわせ、これも失神させました。そのまま石上麻呂いそのかみのまろを肩にかついで庭に出ました。

雲が晴れ、美しい望月もちづきが顔を出しました。輝夜は、夜空を見上げてつぶやきました。


輝夜  「子供の頃に夢見た月の者は、とうとう来なかったわね」


肩に担いだ、いとおしい幼馴染おさななじみの横顔を見つめます。


輝夜  「まあ、麻呂タンと一つになって、月の物が来なくなったら責任取ってもらうけどね」


輝夜は不敵に笑うと、強盗誘拐に見せかけて夜の闇へと消えて行きましたとさ。



その後、どうなったかって……?

石上麻呂いそのかみのまろは無事かって?

あらあら……何をおっしゃるやら。

日本史上、初めて強姦罪が男性に適用され、施行されたのは2017年7月13日からですよ。

それ以前なら、女性は男性に何したってかまやしないんです。


きっと、二人の子孫が、今もどこかで……上野動物園のゴリラコーナー辺りで……元気に暮らしている事でしょう。


めでたし、めでたし。

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アホ昔話・竹取物語(かぐや姫) 風都水都 @kaze_to_mizuto

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