エピローグ

 遠退く意識から目覚めると、見慣れない天井がそこにはあった。


 驚いて起き上がると、全身包帯を巻いた状態で寝かされていた。病院かと思ったけど、木製の建物から病院と言うよりコテージに近いかもしれない。


 刺されたはずの胸はそこまで痛くなくて、それよりも生きていることに驚いて私は辺りを見渡した。


 ここは、どこなのだろう……?


「あ、目が覚めた?」


 声に驚いて振り変えると、そこには緑の髪をした青年が驚いたようにこちらを見ていた。


「ごめんね驚かせて。怪我はどう?」


「大丈夫……です。」


 まだ混乱している私に、彼は事情を説明してくれた。突然眩しい光と共に私が現れて、道端に倒れていたところを助けてくれたらしい。傷は魔法で治したといっていた。でなければ致命傷で死んでいただろう。


 私は、サリアのいた世界に来てしまったのだ。ここの地名も彼に教えてもらった地図に乗っていたものと同じで、間違いはないだろう。魔法が使えている時点で、私のいた現代ではないことは確かだ。


 でも……どうして?


 混乱していた私は、優しく話を聞いてくれた宿の青年に自分のことを話した。そして、サリアと言う人物に覚えはないか聞いてみると、彼は複雑な顔をして一枚の紙を私に差し出した。


【反逆者サリア、森にて身柄を拘束、監獄へ】


 それは新聞だった。どうして私に見たことのない文字が読めるのかわからなかったけれど、大きな文字でそう描かれていて、私は絶句した。


 サリアは国王暗殺の罪で逃亡中の犯罪人で、つい最近捕まり誰も会うことの出来ない監獄へ収容されたらしい。


「サリア王子は王位継承権を狙って国王を暗殺しようとした。その際禁じられていた悪魔との契約をしたって聞いている。君が呼び出されたのも、その悪魔の力かもしれない。」


 青年はそう付け加えてくれたけど、私の耳には入ってなかった。


 サイアが……犯罪者?

 私をこの世界に呼んでくれたのに、彼とはもう、会えないの……?


 ようやく彼と会えると希望を抱いた瞬間、私は絶望のどん底に叩きおとされたのだ。


 サリアが犯罪者な訳がない。そんなひどいことをする人が、あんな笑顔を向けられるはずかない。


 それなのに、新聞は彼を犯人と決めつけ、糾弾していた。その文字の一つ一つがあまりにもひどくて、私は涙を流した。


 貴方に会うことだけを希望にしていたのに。彼はもう、手の届かないところにいる。


 私を助けるために、この世界に呼んでくれたのに


 この世界には、貴方は触れることの出来ない遠くにいる


 私はこれから、何を目標に生きていけばいいの……?


 誰も知らない、この異世界で……。


 ねぇ……


 貴方はどこへ行ったの?

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貴方はどこへ? ぺる @minatoporisio

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