撃退
━━ッバン!
作戦を聞き終えたと同時に、血まみれの男が部屋の扉を蹴破った。激しい音と共に、男は血走った目で私をにらみ、すぐに包丁を振り上げた。
『今だ、サオ!!』
私は彼の指示通り、通信石を男に向かって投げつける。その時、目をつぶった。
『フラッシュグレネード!!』
瞬間、通信石越しにサリアが魔法を放った。本来通信石の映像や音は触ってるものにしか見えないらしいのだが、特殊な魔法を使えば一時的に石を光らせたりすることができるようだ。
「うわっ!?」
突然のフラッシュに男は目をやられてたじろいだ。その隙をみて私はおもいっきり男に突撃する。
男の大きな図体が片向いて倒れ、痛みで悶絶しているその首もとに、ハサミを突き刺した。肉と血を押しきり、ぶちぶちと刺していく感覚と、生暖かい血が吹き出して手を汚していく。
すぐにハサミを抜いて男から離れると、男はヒューヒューと悲鳴にならない声と共に血を喉から溢れさせ床に付していた。
気持ちの悪い感触が手に残って、人をあやめた罪悪感と血の匂いに私はその場で吐いた。胃散しかでないのに吐き気は収まらず、喉を焼きながら和は氏はは気づけた。
『サオ!? 大丈夫かいっ!?』
男のすぐ近くで落ちていた通信石から声が聞こえる、サリアだ。
落ち着いた頃石を拾い上げ彼と通信すると、ひどく心配した彼の顔がそこにあった。
「……やったよ。私、人を殺しちゃった……。」
『正当防衛だよ。それに、殺したのは僕たちだ。君だけじゃない』
私の罪の意識を少しでも軽くするため、彼は魔法を使うことで私の人殺しに荷担してくれた。その罪悪感と、一人ではない安心感に涙がポロポロこぼれてしまう。
大好きな彼すら、人殺しにしてしまったのだ。
申し訳なさでいっぱいになっていると彼はいつものように笑ってくれた。
『はは、僕たち二人とも共犯だね。お揃いさ。』
そんな彼の笑顔でどれ程救われたか。
両親も死んで、人を殺して、生きる希望なんでない。
それでももし、希望を抱いていいなら……
私は彼に会いたい。
彼に会うために生きていたい。
そう、強く思えた……
━━グサリッ
不意に強い痛みが胸を襲った。恐る恐る胸元を見ると、大きなナイフが胸を貫通していた。後ろから刺されたみたいだ。
ごふりと、今度は私が、喉から血を溢れさせた。
『サオ!?』
サリアからは暗くて見えなかったようだけど、どうやらもう一人、犯人がいたみたい。
私の後ろで少し体格は細い男が、ナイフを震えながら持っていた。私の体を突き刺すナイフがブスリと抜かれて、私は地面に倒れた。
あぁ、折角いきようと思ったのに……
折角……生きる希望を見つけられたのに……
どう……して……
『サオ、サオ!!』
彼の声がどんどん遠退いていく。
あぁ、もう彼の声も聞くことができないのか……
そう思うととても悲しくて、流れてくる走馬灯の半分は彼の笑顔で……。
最後に彼の声が聞けて……よ、か……った……
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