十三回忌当日
翌日、8時半に起きて1階に下り、台所経由でリビングに向かう。
「おはよう、ちぃちゃん」
「ああ、千里、おはよう。ほら、朝ご飯できてるから運んで」
「うん、おはよう」
すでに軽く身支度を済ませた祖母と母が並んで台所に立っていた。
母から渡された人数分の茄子と豆腐の味噌汁と、ご飯が乗ったお盆を持ってリビングに向かえば、朝の情報番組をかけたまま父が新聞を読んでいた。
「お父さん、おはよう」
「おはよう、千里」
挨拶しながら私が盆を机に置けば、父は新聞を畳んで配膳を手伝う。
お盆の上のものを全部置いたら、私はまだ何か用意していた様子だった台所に戻った。
すると小皿に乗った切り分けた玉子焼きと庭のトマトを切ったやつ、お醤油とマヨネーズとお箸をお盆に乗せられ、今度は母や祖母も一緒にリビングに戻る。
「いただきます」
皆で手を合わせて言い、私は淡いクリーム色で切り口が斜めになっている玉子焼きに箸を入れた。
淡い黄色で渦巻きがほとんど分からず、だし汁が染み出しているこの玉子焼きは、母の焼き方だった。
祖母が焼くともっと水分量が少ないから玉子の黄色が濃く、焼き目の焦げ茶の渦巻きがはっきりしている。母が大学時代に居酒屋の厨房でアルバイトをしていた関係で、祖母と母は親子なのに、玉子焼きの焼き方が全然違うのだ。
でも、母は玉子焼きを着る時、包丁を垂直に下ろして切る。こんなふうに断面がはっきり見えるように、切り口が斜めになっているのは祖母の切り方だった。
「今日の玉子焼き、お母さんが作って、ばあちゃんが切ったんだね」
しげしげと眺めながら言えば、母は目を見張った。
「そうだよ、よく分かったね」
母が意外そうに言うので、ちょっと得意な気持ちになる。
「まあ、もう17年、2人の娘と孫をやってるからね」
得意げに答えてから理由を説明すれば、母も祖母も感心したような顔をした。
――たぶん母と祖母は、今日、問題なく十三回忌に臨めるだろう。
十三回忌 佐倉島こみかん @sanagi_iganas
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