君が望む結末を、僕は求める
昨日の授業をまた、受ける。2回目の授業は1回目よりもしっかりと理解できた。まぁ、同じ授業を複数回繰り返すのだから当然といえば当然なのだが。
「なぁなぁ、彩人」
「ん?」
「お前、変わった?」
「は?」
不思議なことを言うものだ。僕は変わってなんかいない。
「真翔、お前、なんか変なものでも食った?」
「いやな、俺の知ってる彩人のはずなのに、どこか俺の知らない雰囲気だからさ」
「だぁから、僕は変わってない」
あれ? 今の真翔のセリフ、どこかで聞いたことがある気がする……いつだったかな?
「で、本題はこっちなんだが。彩人、放課後どっか行かね?」
「悪いな。放課後は予定がある」
「そうか」
「で、今日の昼も一緒に食べないからな」
「えぇ……」
「ま、今日は諦めてくれ」
「チェ……」
おとなしく引き下がる真翔が意外だったが、それ以上に、お昼が楽しみだった。また、時雨と一緒にご飯を食べよう。それだけのために、正午、お昼時まで授業をまじめに受けた。同機は不純だが、まぁ、許されるだろう。
「時雨」
昼時、僕はまた声をかけた。回りの反応も、時雨の反応も知ってる。だから、今度は失敗しない。
「うん」
この時、僕は気づかなかった。あまりにも、自然すぎて、当たり前すぎて。
僕と君との距離が、前回の引継ぎのように、近かった。周りの喧騒はすごかったが、それも気にならないぐらい。僕と時雨の世界だった。
「ねぇ、時雨」
「ん?」
きれいな箸使いで出汁巻き卵をもきゅもきゅしている。そんな時雨の邪魔をしたくない、そう思いはするものの、いまさらながら聞いてみることにした。
「時雨がさ、もしだぞ? もし、時雨の好きな人か、大切な人が目の前で死んじゃったら、時雨は、どうする?」
二回も死なせてしまったからって訳じゃないけど、でも、僕一人が考え付くだけの対策じゃない、誰かの意見も欲しい。それに、時雨ならって、思ってしまったから。
「あたしだったら、あたしだったら……」
たっぷり溜めてから、時雨は哀しい笑顔で教えてくれた。
「あたしだったらきっと、諦めてる。何回、何十回繰り返しても、どれだけ繰り返しても、あたしはきっと、助けられないし。仮に助けれる未来があるとしても、あたしはその結果に行き着く前に、きっと辛くて、諦めてる。どれだけあたしが愛している人でも」
僕にはわからない考えだったけど、すごくスッと、胸の中に吸い込まれた。だって、普通ならあきらめるはずなんだ。どうしようもない現実と、途方もない過程に挟まれて、きっと、心が先に折れてしまう。もしかしたら、僕も……。
「でも、彩人はそんなことなさそうだね。あたしとはたぶん違う」
「なんで?」
「だってさ、」
彼女は分かっているだろうね、きっと。そういえば僕を縛れることを。必ず、時雨の諦めた未来にたどり着くと。
「彩人、負けず嫌いだから。昔から、ずっと」
「……そうだね、きっと僕は、」
僕の望む結末のために、抗うんだろうね。
僕は望む。大切は人と、ともに過ごせる明日をっ! 白銀マーク @HakuginMark
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