エピローグ:二人の答え

 夕暮れの教室、男女二人が椅子に腰掛けて話をしていた。

「月影君、金曜日に言った話を覚えているかい?」

 月影と呼ばれた少年は、少女の言葉に頷き言葉を返した。

「覚えてるよ。僕もあの後考えてみたんだ。」

 少女はその言葉を聞き、片方の口角をあげて笑みを浮かべて問いかけた。

「じゃあ、聞かせてくれるかい?君の普通、が何なのか?」

 少年は今度は頷く事は無かったが、ゆっくりと口を開いた。

「僕にとっての普通は、願いなんだと思う。今日という日が続いて欲しいという願いそれが無意識に言葉になってるのが普通とか当たり前なんだって。だから僕にとっての当たり前や普通は、結とこうやって小難しい事を議論することかな。」

「なるほどね、分かる気がするよ。」

 結と呼ばれた少女は少年の言葉に頷き、

「それじゃあ、最後にこの話のまとめを私がして終わりにしようか。」

 彼女は、そう言って少年を指差した。

「私の普通は、君だよ。月影君。」

「・・・。どういうこと?」

 意味を理解できなかったらしい、少年は首をかしげて問い返した。光の関係なのか、それとも別の理由からなのか少女の顔は少し赤みを帯びているように見える。長いような短いような沈黙の後、少女はついに口を開いた。

「普通っていうのは、なにかがあるから定義できるものだと考えたんだ。それで一つずつ無くしていって考えてみたんだ。そしたらどうしてか、君のいない生活だけが全く思い浮かなくてね。私の中で君がどれほど重いものなのかを実感させられたよ。だから私の中での普通は、私の生活を作ってくれている君だと思ったんだ。」

「そうなんだ。それならもうしばらく、高校卒業するまでは・・・。」

「一つ頼みがあるんだ。」

 高校卒業するまでは、この関係が続くね。おそらくそう言おうとした少年の言葉をさえぎり、彼女は顔をうつむけて言った。

「いつまでも、私の隣にいてくれないか?私が不思議だと思ったことを、今のようにこれから先も一緒に考えてくれないか?」

 豆鉄砲を食らったような顔をした少年だったが、やがて彼は笑みを浮かべて答えを返した。

「喜んで。」

 その日二人は、三年間で始めて一緒に下校した。

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そうして僕らは解を見つける 天塚春夏 @sarashigure

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