aqua water mizu

藤原埼玉

異世界転生のくそったれがァ!?

「異世界転生のくそったれがァ!?」


 この一言で私に何が起こっているか大体おわかりだろうか?

 

 テンプレというものとその様式美、それらは高い汎用性の反面それだけ多くの不幸を生み出す。


 ちなみに今の私。吹雪の夜に一人洞窟で寒さに凍えている。


 辛うじて足元の窪みに”温水”を生み出して足湯しているがそれもすぐに冷めるので足し湯をしないと寒さに凍えそうになる。


 舞い上がっていたことは認める。


 多くの同い年くらいの子達と一緒に見知らぬ城に召喚され地水火風といういわゆる四大元素の使い手の内の一人としてお偉方にちやほやされてこれから起こるめくるめく何かに否が応でも胸は高まった。


 が。


 風を起こしてスパスパ物を切ったりごうごう火を起こしたりとド派手なことをしてる少女達を横目に私は冷静になる。


 "水"が出来ることってなんぞ?


 そんな私に出来たことと言えば湖の水質を良くしたり雨を降らしたり手からお湯を出したりするくらいだった。


 ええ…私の能力地味過ぎ…?と自分で気が付く頃には既に私への視線は針のむしろ。残りの巫女三人にもハブられすれ違う度にプークスクスと笑われる始末。


「ちっくしょお!」


 思い出し怒りをしていると洞窟の奥の壁から何か物音がした。


 振り返ってみて戦慄する。


 余りに大き過ぎて壁だと思っていたものが生き物のように動いたのだ。


「我は水神…我の眠りを妨げるものは誰ぞ…」


「ひぃぃ後生ですたすけてください」


「はて…水の巫女ともあろうものがなぜこんなところで一人凍えておる?」


 私が土下座姿勢でぷるぷる震えていると水神さんは心配そうに声をかけてくれた。意外と話の分かる人(?)だ?


「じ、実はかくかくしかじかこのようなことがありまして…」


「ほう…人間とはかくも愚かしいものぞ…」


 あれ?なんか怒ってくれてる?


「我が眷属である水の巫女がそのような立場に窶すなど看過できぬ…」


 私の身体の周りにみょみょみょんと水っぽいエフェクトがかかった。


「手の平を壁に差し出してみよ」


「こ、こうですか?」


 私の手の平からは鉄砲水と言うには生ぬるいほどの勢いと量の水が噴き出し洞窟はあっという間に半壊し眼前に新しい地形を生み出してしまった。


 唖然とする私に水神さんはうむと満足げに頷く。


「これが汝の真の力だ」 


「この力があれば…」


「そうだ、世界の混沌などたちどころに解決せしめよう」


「…」


「…どうした巫女?」


「とりあえず残りの巫女三人ぶっ潰してきます」


「巫女ォ!?」


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