第2話 ゲームの中の世界
「ゔっ……あ? あれ? 此処、何処だ?」
突然の暗転から目を覚ますと、俺は何故か地面に横たわっていた。土の地面はひんやり冷たく、生温い風が体を通り抜ける。
そして……さっき殺したはずの男剣士、女魔道士、女治癒術師が、多量の血溜まりを流しながら、瞳孔が開いたまま死んでいた。その死体は妙に生々しく、血の臭いが俺の鼻をひん曲げる。
「くっせ!!」
俺はあまりの異臭に飛び起き、死体を蹴り飛ばす。
なんでこいつらリスポーンしてねぇんだ? まさか復活薬でも隠しもってて寝たふりしてんのか?
俺は女治癒術師の腹を貫いている剣を引き抜き、うつ伏せに倒れている男剣士に背中から地面を貫通するが如く、垂直に突き刺す。しかし、やはり死んでいた。
それはさておき、感覚も嗅覚も敏感になっていて、突き刺す時も肉を抉る感触がはっきりと伝わってきた。
まさか、まさかなのか? 俺はゲームの中に入ったとでも言うのか? ははは……。
俺は密かに興奮を覚えた。リアルでは絶対に叶わなかった殺害する感覚を味わう事。それが遂に叶ったのだと。
もっと……もっと! イヒヒヒ……。
思わず不気味な声が漏れた。だが、今のこの興奮を抑える術は無かった。もっと味わいたいという願望が、更に俺の中の破壊衝動が駆られ、男剣士に突き刺さった剣を引き抜いては、また突き刺す。
あぁ、この感触堪らねえ……!イヒヒャハハ……。
十分突き刺した後、剣で男の首を斬り落とす。次に女魔道士の方へ向かい、もう一度、頭に開いた剣の刺し傷に鍵を差し込む様に剣を突き刺し、柄を回転させて、顔面を抉り掻き回す。頭蓋骨がゴリゴリと砕ける感覚がはっきりと柄を回す手に伝わってくる。
そして、頭蓋骨に突き刺したまま、胴体に向けて全体重を掛け、体を真っ二つに切り裂く。血はこれでもかと言うほど溢れ出し、最早人の原型を留めていなかった。
最後に女治癒術師の方へ向かうと、俺はある事気がつく。もう死んでいるも同然だが、僅かに回復しながら意識を保っていたという事を。まさか助けがくるのを待っていたのだろうか?
「おいおいおいおい!? 生きてんじゃねぇかよ!! クソ女がぁ!!」
「あ……う……」
「でももう、言葉も発せられねぇ様だなぁ? てか、お前はゲームの画面越しの筈だが……なんでそんな苦しそうなんだ?」
「まだ……し、ねない……」
「あっそ……さっさと死んで天国行って来いやぁ!!」
俺は、岩壁に倒れ込む女治癒術師の頭を壁にめり込ませるかの様に、何度も何度も蹴り込む。
「がっ! ぐっ! ゔぁっ!」
「死ねええええ!!」
そうして俺は最後に女治癒術師の首を壁に擦り合わせながら上へ持ち上げ、もう片方の手で持つ剣で勢いよく女治癒術師の体と壁に杭を打つ。
あぁ、なんて良い表情なんだ。人間の瞳孔が開ききった死んだ目は最早、性的快感を覚える。即死した剣士や魔道士より、僅かな力で生き延びていた所を殺される絶望感が身に染みて分かる。
あぁ、この表情をこんな場所で放置するのは可哀想だ。しっかり俺が保管してやらないと。
俺は女治癒術師が壁に剣で杭を打たれている所を引き摺り下ろし、表情が崩れない様に丁寧に首を斬り落とす。
リアルでは絶対に叶わない、夢の様な事が今叶うなんて……。
俺は女治癒術師の首を、おそらくインベントリの代わりに用意されたリュックサックに詰め込む。
そんな作業をしている所で、遠くからお爺さんが散歩でもしに来たかの様にゆっくりと歩いて来た。俺はこれにニヤリ笑う。
お爺さんは俺の事を視界に入れると、ニッコリと笑顔を見せ、静かに通り過ぎようとするが、その周囲の光景に腰を抜かし叫ぶ。
「ひ、ひええぇ!? し、死体! なんでこんな所に!」
「爺さ〜ん。あんたもコレいる?」
俺は、女魔道士の首を斬り落とした後、お爺さんにその首を投げる。突然投げられた物にお爺さんはまじまじとそれを見つめるが、それが人の頭部である事に気がつくと、さらに腰を抜かす。
「うわああああっ!!!?? お、お前がやったのか!?!?」
「だったらどうするよ?」
俺は次に、この今いる道の奥に村が一つある事は知っているが、脅したいが為に道を聞く。
「それよりさぁ。俺、少し休みたいんだよねぇ。この先に村とかある?」
「あ、あぁ。あるぞ」
「それってどんな場所?」
「長閑な村で、村人達はみんな仲が良い……」
殺されたく無いのか、さっきからなんでも正直に話してくれる。全く可愛い奴だなぁ?
「男女比は?」
「そ、そんな事も聞くのか……? あいや大体、六対四で男性の方が多い……です」
「なるほどねぇ……ま、有難うなお爺さん。全部知ってるわ」
「んなっ!?」
俺はケロっとした表情で、片手に持つ剣で腰を抜かして尻を着いたお爺さんの胸を突き刺す。
「あがぁッ!? な、何故……全部答えたのに……」
「あぁ? 全部答えれば殺さねぇなんて一言言って無えだろ。クソ爺い。最初からこいつらと同じ事にして、モンスターの餌にするつもりだったんだよ。此処は安全地帯と言われているが、こんな多量の血の匂い。モンスターが集ってこない訳が無いよなぁ?」
「あ"ッ……お、お願いだ……娘だけは……手を出さなぃ……」
良い表情だぁ……まさか一人娘がいるなんて新情報げっとお。先にこの事言えば助かったかもしれねぇのになぁ?
「うるせぇ! 黙ってろ!」
俺は、お爺さんがこれ以上深く刺さらないように、必死に剣を押さえているその柄を、思いっきり蹴る。
「ギャッ!?─────」
さて、例の村へと行くとするかぁ。
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