第5話 システム
俺はハッと目を覚ますと、真っ白な四角い空間で正面は大きなガラスで仕切られており、そのど真ん中で直立状態でキツいベルトで俺は縛られている事に気がつく。
俺は確か衛兵に電撃を食らわせられて気絶したんだっけな? ならこの流れからして、拷問でもする気か?
すると、ガラス越しに真っ白な白髪に白衣を着た、外見では六十〜七十代の男がゆっくり俺の目の前でピタリと足を止める。その表情は無表情からにんまりとした笑顔となり、俺の体を見つめる。
「あんた、男の身体も行けるって口か?」
「黙れ……」
俺が挑発すると、表情はスッと無表情になり、手元のボタンを押す。
その瞬間、気絶する前と同じ程の電撃が全身を走る。
「ぐあああああッッ!??」
「お前、こんな状況でそんな軽口が叩けるとは、頭がおかしいのでは無いか? それとも余程のバカなのか。今の私はお前の脳味噌を改造する事だって可能なのだぞ?」
俺は笑う。頭がイかれているのは大正解だと。拷問如きで俺を治療するなんて無理だ。
「クククク……どうやらマジで拷問しているようだな? だが、お前らでは俺に勝てない。殺す事も出来ない。 さっさとこの拘束を解け。皆殺ししてやる」
「はははは! どうやら本当にイかれている様だぁ! 拘束を解けだと? それで「はい分かった」って解く訳が無いだろう? おっと……抵抗すると私が何もしなくても高圧電流が流れるぞ?」
俺は理解する。抵抗しても反対しても無駄。絶対逃れられないという事を。でもそう考えるのは普通の人間であって俺は違う。
無駄でも俺は無駄じゃねぇ!
俺はベルトを引きちぎるべく、体を揺すったり、その場から離れようとする。勿論全身には耐え難い電流が常に流れ続ける。
「ぐあああああッッッ!!! 俺ゔぁ、ごんなどごろでぇ……のんびりじでられるほど、馬鹿じゃねぇえ"んだよぉ!!」
「ば、馬鹿な! あれほどの電流をくらえばもう気絶して良いはず!?」
全部……全部皆殺しだぁあ!!
超高圧電流によってベルトから煙が出始める。もうひと押しだ。
「だぁぁらくぜえええぇ!!!」
そして遂に、ベルトは電流によって焼き切れ、俺は解放される。直後、そのままの勢いでガラスに突進し、白衣の男に向かってガラスを突き破る。
「嘘だろ!? それは強化ガラスだぞ! 畜生! くたばれぇ!」
あと一歩で白衣の男を殺せる。そう思った瞬間、白衣の男は手元のボタンを指で出力最大にした後、力強くボタンを押す。
その高圧電流は最早、落雷以上と言っても過言では無い。完全に『処刑用』の電流だった。
この電流をくらえば確実に死ぬ。そう俺に電流が流れる直前、俺は完全に理解した。どうしてボタンを押すだけで、機械にも繋がれていない俺の体に電流が流れているのかを。
「ぎゃあああああッッ!?!?」
まだだ、まだ死んではならない。死ぬ前にやる事が一つある。『脳味噌に埋め込まれているチップを取り除かなくては』。
「ヒヒヒ……ヒャハハハ!!」
俺は近くの机を頼りに体を起こすと、ボールペン取り出す。そして、尖った先端を右目の若干上辺りを狙い、思いっきり刺す。
「遂に自害を始めおったか!」
自分でも何故生きているのか不思議でならない。何度も何度も脳をペンで突き刺し、ズタズタに穴が空いた頭の傷口を両手で開く。
ただ人の頭蓋骨はそう簡単に人の手で壊せる程脆く無い。
俺は姿勢を低くし、両腕に力を込め、力任せに傷口を開く。
「うぅうぅぅ……このやろおおおお!!」
頭部から聞こえるメキメキといった音と共に俺の頭蓋骨は真っ二つに割れ、中から脳味噌が露わになる。
そして……。
「ああああぁぁぁッッ!!!」
自分の脳を手で潰した。
…………。俺はこれで完全に死んだのだろう。しかし、俺はゲーム中の住人ではなくあくまでも異界の住人だ。俺は、想像の中であの何時ものPC画面に映り込んでいたカウントダウンを作り出す。
10
9
8
7……。
俺の考えが正しければ、この後に俺は復活する。そう、このゲームのシステムによって。
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5
4……。
生き返ったら、俺と同じ目に合わせてやる……。
3
2
1
《リスポーンを開始します》
俺は意識を覚醒させる。みるみるうちに傷口が急速に治っていくのが分かる。そして、声が聞こえる。
「ば、馬鹿な……!? 自己蘇生だと……? ば、化け物、コイツは化け物だぁ!!」
殺す。此処にいる奴ら、全員殺す!
俺は完全に体が治癒を完了すると、一気に白衣を着た別の男の間合いを詰めると、死ぬ前に持っていたボールペンを勢い良く、首筋に刺す。
「ぎゃあああっ!?」
次に瞬時に別の男と間合いを詰めると、飛び膝蹴りを食らわした後、床に倒れ込ませると同時に首を折る。
「ぐえっ!……」
最後に俺を拷問した白衣の白髪男。咄嗟に拾ったボールペンを、男に飛び掛かり馬乗りになった後、大きく開いた口に垂直に突き刺す。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ!!や、やえお……おごっ!?」
そして閉じられなくなった口に俺は両手を突っ込み、顎を上下に無理矢理開く事で顎を外し、更に力任せてに口を開かせる。
「あががががッ!?!?」
あり得ない程に開いた口に俺は腕を一本突っ込み、口の中に入った拳を脳味噌のある方向へ向け、鼻へ通じる所に指を引っ掛け、潰す。
「ひゅっ!?」
更に奥へ、眼球の筋肉を内側から引っ張り、目ん玉を陥没をさせる。
「キッッッ!?!?」
最後に脳味噌へ到達。頭蓋骨を破壊せずに、喉から鼻へ、鼻から目へ、目から脳へ腕を突っ込み、グシャリとそれを潰す。
「………………」
最早断末魔を挙げること無く絶命した。
俺の腕は血や臓物が引っ掛かりとても汚い。さっさと洗わないと。
そうしてなんとか、手洗い場を探して洗った。すると、外から誰かが入ってくる音がした。直後、女の悲鳴が響く。
PKしていたら、いつの間にか異世界に来ていた件 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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