おまけ サブロー



-ところでサブローはどうしてんだろう?


ワタルがビールのジョッキを置くと誰にともなく呟いた。ワタルと会うためにかつて中高時代に過ごしたこの地集まった僕たち四人は中町の居酒屋で久しぶりの再会を楽しんでいた。


暫く沈黙がありセイジが口を開いた。


-サブローが退学して暫くしたころ携帯に連絡があった。誰かと思ったその時のこと

 はみんなに話した筈だ。



もらった本を読んだんだ。僕らみたいに東京の小学校から九州の中学に行った人だった。すごい人だしわくわくするほど面白かった。そんな人みたいになれるとは思わないけど行ってみたいと思ったんだ。その人が歩いた道を歩いてみたいと思ったんだ。


-どこに行くんだと聞くと、ヒマラヤと言っていたがにわかに信じられないままその 

 ままだよ。


-本当にヒマラヤなんかに行ったのか?

-その後も連絡はないさ。

-携帯も繋がらなかっただろう。



-俺たちは大学生になってサブローのことはすっかり忘れちまったじゃないか。

 みんなでサークルの女の子たちと遊びに行ったり・・・大学野球の観戦にいったり・・・

 

-楽しかったからなぁ・・・誰もサブローのことを気にかけてこなかったな・・・




オージが目を潤ませて言うとワタルが言った。


-やっぱりサブローがいないと俺たちじゃないよな。


-俺たちじゃないか・・・・・・そうかもしれないな。

-いつもみんなにはなを持たせてくれていたよな。


-また、サブローと松浦橋のガストにメシに行きたいなぁ…


-今にして思うとあの頃は本当に楽しかったよなぁ~


-そうだな…

-会いたいよな~


-そうだよな~


誰もがサブローといつか会えることを祈り始めていた・・・



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八太郎館物語Ⅱ 愚息の一文 @wasesaga

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