お手紙

タマゴあたま

お手紙

 私がポストをのぞくと、私宛ての手紙が入っていた。差出人はどうやらクラスメートのようだ。毎日会っているわけだから、直接言えばいいのに。なんで手紙? その謎はあっさりと解けた。


―――――――――――――

 大事なことなので初めに言います。

 僕はあなたのことが好きです。


 恋人がいるのであれば、あなたのことはきっぱり諦めます。気持ち悪いと思うなら、この手紙をすぐに処分してください。

 もし、少しでも興味があるなら、このまま読み進めてください。








 はっきり言うと、ひとめ惚れでした。

 きっかけは、僕が転んでばらまいてしまった書類を拾っていた時でした。周りに人はたくさんいたのに、手伝ってくれたのはあなただけでした。同じクラスとはいえ、ほとんど接点のない僕を助けてくれました。あの日から気づけばあなたのことを目で追うようになっていました。


 連絡先を交換した時の緊張感は今でも覚えています。実はあの日嬉しすぎて眠れなかったんですよ。あなたから返信が来るだけでどれだけ嬉しかったことか。

 進級しても同じクラスになれた時は天にも昇る気持ちでした。体育祭での二人三脚で一位を取れた時、ハイタッチをしましたよね。あの時の笑顔がまぶしくて、胸に焼き付いています。

 それがあったからか、さらに仲良くなって休日に映画館や遊園地にも行きましたね。さすがに二人きりというのは勇気が出ませんでしたが。


 思えばたくさんの時をあなたと一緒に過ごしました。まあ、他の人もたくさんいましたが。

 でも、これからは、あなたと過ごす時間を増やしていきたいんです。


 僕と付き合ってくれませんか。

―――――――――――――








 読み終わると、私は手紙を破り捨てた。

 明日こそは渡そうと思っていた、想い人への手紙を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お手紙 タマゴあたま @Tamago-atama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説