第8話となりのキミ

「…」

とても静かな場所。カーテンに囲まれている。清潔感漂うシーツのにおい。ここは保健室だ。僕は、なぜかベッドの上。さっきまで、バレーの試合をしていたのに。

「……あっ!」

僕は勢いよく起き上がると、右隣のカーテンを開いた。シャッ。

「…」

誰もいない。あるのは、保健の先生の机と椅子だけ。部屋の入り口には、「外出中」の札がかけられている。僕は、カーテンをまた閉めた。

「スースー…」

すると左側のカーテンからかすかに誰かの寝息が聞こえた。僕は、そっとそのカーテンを開けた。シャ…。

「スースー…」

となりにはキミがいた。体操服のまま、ベッドで寝息をたてている。おでこが赤くなっているものの、どうやら無事のようだ。僕は、ほっとして肩を落とした。

「スースー…」

長いまつげ。福耳。頬をピンク色に染めた白い肌。少しくせのある前髪。知っている。となりでいつも見ているから。

「ん…」

キミが目をこすりながら、ゆっくり目を開けた。

「…ん…え?!何…」

こっちを見るやいなや、彼女はかけてあった布団ですぐさま顔を隠した。

「ここ、保健室。ほら、さっきバレーのボールが顔に…」

「違う…なんで居るの?いつから?」

キミが恥ずかしそうにしている姿を見て、僕も一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。

「ご、ごめん!大丈夫かなと思って…」

顔をそらした僕は、急いで自分のベッドへ戻った。

ズキン。

「いてっ…」

頭に少し痛みが走った。たしかコートに倒れるキミを見ていた時、僕の頭に何かが当たった。その衝撃は、サーブをうった後、手首に感じるあの痛みと同じだった。きっとよそ見していた僕に、バレーのボールが飛んできたんだろう。

「…大丈夫?」

キミが心配そうにこっちを見ている。

「大丈夫。実は僕もボールが頭に当たってさ。」

そう言って、ベッドに横になった。

「そうだったんだ…フフッ。仲間がいて良かった。」

キミが笑っている。本当はキミに夢中でボールに気付かなかったなんて言ったら、どんな顔をするだろう。同じように笑うだろうか。ドン引きされるかもしれないな。

「ねぇ。」

キミがこっちを見ている。カーテンはお互いの顔が見える程度に開いたまま。

「何?」

キミの方へ身体を向けた。

「となりが君で良かった。」

赤いおでこのキミが、顔をくしゃっとさせて笑った。身体の全てがじんわり熱くなってきた。胸が苦しい。僕はゆっくり起き上がり、真っ直ぐな瞳でキミを見た。今日の昼休み、キミも同じような気持ちで、その人を見つめていたのだろうか。

分からない。キミが僕をどう思っているのか。

伝えたい。僕はキミが好きだ。

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となりのキミ パルーラ @palpal66w

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