第2話

「綺麗………」

思ったことが俺の口から、思わず、零れた。





その瞬間、天使様は今まで窓に向けていた視線を俺の方へ向けた。

俺は天使様の顔を見て、更に目を見張った。

その顔には、薄紅色より少し赤い色をした瞳にその瞳を縁取る髪と同じ乳白色の長い睫毛、すっと通った鼻に薄い唇が正しく配置されていた。

とんでもない美少女だった。






ハッと我に戻った俺は咄嗟に何か言わなければ、という謎の使命感に駆られた。



「えっと…、これは、その、何というか、アレです、はい、……その、勝手に覗いてすいませんでした!!!!」




ああああああああぁぁぁ!!

絶対変な奴だと思われたっ!!

多分、今の俺の顔は目が泳いでるを通り越して目が反復横跳びでもしているに違いない。





「ふっ、ふふっ」



俺が慌てて謝罪を言った数秒後、天使様は肩を震わせ、笑いを堪えていた。




「なんで、…ふふっ、敬語なの?そんなに歳、変わらなさそうなのに、……あははっ」


「け、敬語なのは…、天使様があまりにも綺麗だから……」




天使様が必死に笑いを堪えながら口にした疑問に俺はどぎまぎしながら答えた。


すると、天使様は目を皿のようにして、俺を見つめた。

俺、何か変な事言ったっけ?






「天使様って、僕のこと?」

「えっ、うん」

「ぼ、僕のことが気持ち悪くないの?」

「なんで?」


「だって、他の人と違って目が赤いし、髪の毛と肌なんか真っ白だし。」

「俺は、気持ち悪いと思わないよ。その他とは違う白い髪の毛も赤い目も綺麗だと思った」





俺は思ったことをそのまま言った。

天使様はまた驚いた顔をしていたが、微笑んで、俺に"ありがとう"と言った。



「ねえ、君の名前は?」

「え、えと、…榎本光」


天使様に唐突に名前を聞かれた俺は、テンパりながら答えた。


「そっか!僕の名前は梶原伊織かじはらいおり。ちなみに、僕、だから!」


天使様は笑顔で名乗ってくれた。


天使様ことこの美少女は梶原伊織という名前らしい。


ん?ちょっと待って?

今、男の子って言ってなかった?


そういえば、俺がテンパり過ぎて気付いてなかったけど、声が女の子より低い気がする。

かといって、男の子よりは高い声してるんだけど。



俺が出会ったのは美少女ではなく、とんでもない美少年でした。




「決めた!僕、君と友達になる!!」



天使様は満面の笑みでまた俺にとって衝撃的な事を言った。


普通の人からすればそんなに衝撃的ではないのかもしれないけど、万年ボッチの俺にとっては、凄く衝撃的な事だった。




「…ほ、本当に俺で良いの?俺なんかと友達になっても面白くないと思うし…」


「面白いとか面白くないとかじゃなくて、僕は僕のことを肯定してくれた君と友達になりたいの。」


その目には真剣さが滲み出ていた。


「ということで、今日から君は僕の友達!よろしく!」


「う、うん、よ、…よろしく!」





よく分からないまま、俺に人生初めての友達が出来た。

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雪と桜 迷子の小豆 @maigonodaifuku0912

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