雪と桜
迷子の小豆
第1話
「それでは、また1週間後に来て下さい。」
目の前のザビエルのような髪型をした医者がそう言った。俺はその目の前のザビエル(仮)に会釈し、ありがとうございますと言い、ドアを閉めた。
俺は
生死をさまよった受験生を終えたばかりのピカピカの高校1年だ。そんな青春真っ只中の俺が何故、火曜日という平日の真っ昼間に病院に居るのかというと、俺が中2の時に負った大怪我の後遺症の検査とリハビリに来たのと3年前に倒れた母さんの見舞いだ。
アルコールの匂いが充満した、白く清潔感のある廊下を歩き、俺は目的の病室に向かった。
目的の病室、母さんの居る305号室の前に立ち、病室のドアをノックし、開けた。
「あら、ひーくんいらっしゃい」
母さんは俺を見つめ、優しく微笑んだ。
「母さん、何度も言ったけど、俺のこと、ひーくんって呼ぶのやめてよ。もう高校生だよ、こんなに大きくなったんだから」
「お母さんの中ではひーくんはまだまだ小さいんです〜」
そう言い、母さんは拗ねた表情をしながら、手で5センチぐらいの大きさを示した。
いや、赤ちゃんの時でもそんなに小さくないよ。それ、俺と母さんの身長の差なんじゃないの。
「学校は楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「友達はちゃんと出来た?」
「うん、出来たよ」
「そう、なら良かった」
俺はまた母さんに嘘をついた。
母さんのそのホッとした表情を見る度に罪悪感を覚える。
本当は、学校なんて退屈で全然楽しくないし、高校に友達なんて居ない。
中学の頃もいなかったけど……
要するに、俺は高校でも中学でもボッチということだ。母さんはそんな俺を心配して、俺が見舞いに来る度にこの質問をしてくる。
母さんには色々心配をかけてしまって、申し訳ないと思う。
それから、雑談をして、俺は母さんの病室を出た。
_____________________________
俺はまた薬品の独特な匂いがする廊下を歩いていた。
ふと、視界に入った半開きのドアが気になり、俺はその病室にまるで吸い込まれるようにそっと覗き込んだ。
いや、人の病室なんだから勝手に覗き込んじゃいけないんだけど。
俺は病室の中を見て、目を見張った。
その部屋の中には、透き通るように白い肌と光を受けて神秘的に輝く絹の様な乳白色の髪を持った、綺麗な、綺麗な天使様が居ました。
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