第133話 異次元ボックスレベル8
ボス部屋の扉を開け放つとそこに広がる光景は、一面の真っ黒な湖だった。
「麗奈、予想は当りだね。この中から何が出てくるんだろう」
「社長、なんかヤバい予感しかしませんね」
他のメンバーたちが湖の周りに展開した時だった。
湖が徐々に広がり始めた。
隊員たちの足元まで広がると、ブーツにもアスファルトが登り始めた
「麗奈、鑑定」
「了解です社長」
◇◆◇◆
【アスファルトスライム】レベル126
スキル
粘着
ロードローラー
同化
溶解
弱点
火属性
◇◆◇◆
「社長……これってスライムなんですね」
「だね……」
ちょっとヤバいな……
本体がどれなのかもさっぱりわからないし
アスファルトの広がりを避けながら【眷属召喚】を行った。
【眷属召喚】『赤城』
「ポール、全員を赤城に乗せて」
「了解だ」
俺も赤城の甲板に飛び上がりゼロ戦ゴーレムを呼び出す。
俺用のオリハルコン機体だ。
素早くコックピットに乗り込み飛び立った。
スマホで麗奈に指示を出す。
「麗奈、全員のアスファルトを魔道砲でお湯作って流し落として。このまま外に出るときっとアスファルトスライムも連れ出しそうだから、終わるまで脱出禁止ね」
「了解です」
続けて今度は『ドリャー』を呼び出した。
「活躍の場面か?」
「うん、この湖のアスファルトを燃やし尽くしたいから頼むね。前に俺が収納した、ドリアンの木を全部出すから実を一気に爆発させるよ」
「なんだか切ない作戦だな……」
ドリャーもさすがに自分の分身体ともいえるキングドリアンたちをただ爆発させるためだけに使うのは少し嫌そうだった……
百本のドリアンの巨木をすべてアスファルト湖に放り出すと、ドリャーに指示を出せる。
五千個の巨大なドリアンが木から離れ真っ黒になりながら湖全体に広がっていく。
「咲、火属性を使えるメンバー全員にドリアンを狙い打たせて。麗奈は赤城を結界で包んで」
俺は爆発の影響を避けるために上空高くにゼロ戦で舞い上がった。
その後は、キングドリアンたちの強烈な爆発で一気にアスファルトが燃え上がった。
「ドリャーまだまだ爆発が足らないから、追加お願い」
「わかった」
ドリャーが燃え盛るアスファルトに飛び込むと一際大きな爆発が起こり、そこから更にキングドリアンの木が成長する。
完全に湖のアスファルトを燃やし尽くすまで爆発を続けると、湖の底にモンスターコアが転がっていた。
早速拾い上げたけど滅茶苦茶熱い……
収納から魔道砲を取り出して冷気を浴びせかけて冷ましてから飲み込む。
『ネームドモンスター『オイリム』のコアを吸収しました。異次元ボックスのレベルが8に上がりました』
『ダンジョンナンバー『2149』クリアダンジョンマスターになるか消滅させることを選べます』
スライム系のボスだったから、異次元ボックスのレベルが上がったのかな?
これが一番嬉しいけどね!
しかし暑いな、このままじゃダンジョンコアに近寄りたくないぜ。
『麗奈、魔道砲で氷属性乱射させて温度下げてー』
『はーい、さっきから赤城の上も暑すぎるからずっと使ってましたー』
辺りの温度が我慢できる程度まで下がってから、ダンジョンマスターを選びダンジョンコアに移動した。
少し気になった事があったので『オイリム』を呼び出した。
まさかアスファルトの湖が出てきたりしないよね? とか心配したが出てきたのは俺と変わらないサイズの真っ黒なスライムだった。
プルプル震えて結構かわいい。
『オイリムって大きさは自在なの?』
『この湖と同じサイズのアスファルトを自由に扱えるよ!』
『もしかしてさ、砂とか石とか取り込んで道路敷いたりできちゃう?』
『一番得意だよ!』
『色々頼むと思うけどよろしくね!』
これから行われる都市の復興や新設にメチャ役に立ちそうだな!
麗奈たちがそばに来ると、『ニャーニャー』『プルプル』と会話をしてる俺たちを見て「社長、なんかすごい可愛い絵面ですね! SNSにアップしていいですか?」
と聞いてきた。
「勿論いいよ!」って返事しておいたぜ。
ダンジョンの外に出ると、早速【異次元ボックスレベル8】を鑑定する。
異次元ボックスLV8:スライムランク2スキル
(収納100,000トン、合成LV6、作成LV4、分解)獲得MP(LUC×1.5)
おお、分解スキルが増えてるな。
後は……獲得MPがメチャ増えてるじゃん。
収納十万トンなら赤城もオリハルコンに換装できるな。
頑張ってオリハルコン作らなきゃね。
作成のレベル4は属性魔法のレベル4までは指定できるが三種類までしか指定できないのは変わらなかった。
「TB、俺たちは次の
「うん、よろしく頼むねポール。あ、デビットとジェフリーだけ置いて行って」
ポール達とサンフェルナンドダンジョンの入り口で別れて、咲と麗奈にUSの二人を加えて代々木に戻る。
「咲たちは事務所に戻っててね。俺はこのままジェフリー達とUSに行ってくるから」
「わかったわ、何かしておくことはある?」
「学園生たち鍛えてあげて!」
「了解!」
ジェフリー達と三人でそのままダンジョン転移を使ってニューヨークダンジョンへと転移した。
一層からすぐに外に出ると、リムジンが迎えに来ていた。
「準備いいね」
「TBは世界で一番重要なVIPだからな」
「そんな風に言われても実感わかないよ、子猫のままだし!」
すぐにニューヨークに設置されている臨時の大統領府に向かうと、カール・ブラック大統領が出迎えてくれた。
俺を片手でひょいと抱き上げて、話しかけてくる。
「TB、久しぶり。そろそろUSの国民になる気にならないか?」
「大統領お久しぶりです。今日の話はUSとかJPとかの枠組みが根本的に覆りそうな話ですから!」
「そうだったね。仮定の話は私も藤堂から聞いたよ。果たしてその仮定が正しいかどうかを検証しなければならない」
「そうなんですけど、どこか検証をできる国はあるんですか?」
「それなんだが、カリブ海にGB連邦加盟国の国が集中してあるだろう。そこを統合してカリブ共和国として成り立たせるように働きかけようと思うんだ。プエルトリコに首都を置きUSからも大幅な支援を出してベーシックインカムを基本とした体制を構築すれば恐らく、話を聞いてもらえると思う」
「凄いですね。ただ……それだと一つ問題が」
「どんな問題だ?」
「人口の少ない国ばかりだったので、もう攻略が終わってしまってるので消えるかどうかの確認が正確には取れないんです。攻略済みの場所はそのまま残る可能性が高いかなって思っています」
「そうか……CU(キューバ)、HT(ハイチ)、DO(ドミニカ共和国)、DM(ドミニカ国)の四か国は素直に当面、素直には従ってくれないかもしれないがJM(ジャマイカ)はGB連邦加盟国でまだ攻略が終わっていない。BS(バハマ)まで含めれば一大勢力圏が形成できるんだけどな」
「実現すれば凄いですよね、今のダンジョン出現理論だと小国が乱立しているほど、ダンジョンが大量に発生していますから」
「旧SUを統合するような判断は難しいし、中々前向きに進めるのは困難だな」
「大統領、政治的に動こうとするから難しいんじゃないでしょうか?」
「と言うと?」
「今はDキューブにはダンジョンの危機から国を守るために世界中の国から、等しく人員が送られてきています。ここで、この理論を全員に広めて検証を検討させれば、主義主張の垣根を越えて乗ってくる国が出てくるのではないでしょうか? 先ほどの大統領の意見を少し拝借させていただいて、国家の統合を行った国には、当面Dキューブの基金からベーシックインカムを推進するための資金を供出するとでも言えば、アフリカあたりの連中でも動くかもしれません」
「なるほど……デビット、今の意見をさりげなくネットに流出させて世間の反応を見てくれ」
「了解しました」
「TBもっと頻繁に遊びに来て構わないからな」
「それはさすがにちょっと……」
大統領の元を辞して、代々木に戻ると早速Dキューブの初期メンバーたちを集めて情報共有をし、Dキューブ全体でこの問題に対して討議が行われるようになった。
◇◆◇◆
ブラック大統領との会話で出てきた『ベーシックインカム』は最低限の生活に必要な金額を国が支給する制度です。
これにより働かなくても生活は保障され、子育てに割り当てる時間もできるため、日本の様な老齢化が進む国では打開策として検討されています。
黒猫ってまじ? TB @blackcattb
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