第132話 まさかの理論?

 タチアナがRUの状況を教えてくれた。

 では旧SUソビエト時代の連邦参加国を再び支配下に置こうという政策が進行していたが、ダンジョンの発生によりそんな事をいってる余裕はなくなり、今は打って変わって周辺各国と歩調を合わせ、スタンピードへの対応を行っているそうだ。


 当時の政権はモスクワの十層スタンピードの際に崩壊し、今は世界との協調路線を掲げる民主的な国家運営を行っているという話を聞いた。


 実際のスタンピード対策はロマノフやタチアナを始めとしたDキューブへ派遣されている十二名と、ダンジョン省スペツナズが中心となり対応を行っているそうだ。


 RUには他の国と違って圧倒的に広い土地がある。

 ダンジョン発生地域の中で特に被害の大きかったモスクワとサンクトペテルブルグに関しては、今後も定期的に訪れるスタンピードの脅威から逃れるために、それぞれの都市の近郊にモンスター防護壁で囲まれた新都市の建設が計画されているそうだ。


 勿論Dキューブの設立した復興基金も当てにするが、旧体制派時代に違法もしくは限りなくグレーな手法で成り上がったオリガルヒと呼ばれる新興財閥たちの資金を提供させて取り組むことになっているんだって。


 その話を横で聞いていた麗奈が突拍子もない意見を出してきた。


「社長! 私凄い事気づいたかもしれません」

「ん? どうしたの麗奈」


「今のタチアナさんの話を聞いてて思ったんですけど、今のダンジョンって誰の判断か解りませんが国単位で出現してるじゃないですか?」

「うん、そうだね」


「それならですよ。もし旧SU時代の枠組みで考えたら今は十五か国に分かれていてそのダンジョンの総数は四十八か所もあるんです。それがSU一か国と言う枠組みなら六か所しか現れなかったんじゃないですか?」

「た、確かにそうかも」


「もしですよ、さっきのタチアナさんの話じゃないですけどRUが元のSUの枠組みに戻って一つの国に戻った時って四十二個のダンジョンが消滅したりしないですか? 更にです、それがもし本当にそうだったら、世界中が一つの国になってしまえばダンジョンは世界中で六か所に減るっていう理論に行きつきませんか?」


「なるほど……仮定の話としてすごく興味深いね。どこかの国が合併を成し遂げてくれないかな?」


 タチアナさんも今の麗奈の提案にはびっくりしていた。


「ボス、今の意見は国に報告しても大丈夫なのでしょうか?」

「そうだねえ……タチアナは今のロシアは戦争を起こしたりしないって言いきれる?」


「はい、少なくともそれだけの余力が存在しませんから武力による併合は選択肢に入らないでしょう」

「そうか……ちょっとだけ国への報告は待ってもらえないかな? こっちで調整を付けて、JP、US、RU、CNの四か国首脳には同時に伝えて協議した上で、Dキューブに参加している各国に対して報告して可能性を模索したいと思う」


「それは、いつの予定ですか?」

「事が事だけに先送りするべきでは無いと思うから、早速手配をかけるよ」


「解りました」


 俺は咲と麗奈を連れてすぐに代々木にダンジョン転移で戻ると、島長官に早急な面会を要求した。


「そ、それは凄い理論だな。確かに田中さんの言うような可能性はあるかもしれません。しかし……旗頭がどこになるかは非常に大きな問題だ。JPでは世界が首を縦に振らないのは明白だし、USであってもCNであっても非常に問題はでるだろう。しかし……可能性を知った以上秘匿するのも正義ではない。すぐに藤堂首相と協議をする、返事を待ってもらえるか?」

「解りました。まだ可能性と言うだけで絶対ではないですから、急ぎはしませんがより良い決断をお願いします。それじゃぁ俺たちはTTに戻りますねー」


 それだけを伝えると咲の運転する車で一度、家によってお袋と穂南にトロピカルフルーツの差し入れをした。


「お兄ちゃん、超おいしそーだね。ありがとー」

「だろ! 祖父ちゃんたちにもおすそ分け、しといてね」


「うん」

「じゃぁダンジョンに戻るな」


 代々木の一層から再びサンフェルナンドに戻る。

 今度は四十層へのリフトはちゃんと使えた。


 四十二層へ戻るとジェフリー達の班が頑張っていた。

 早速、ジェフリーが声をかけてきた。

 

「TB、さっきプレジデントから連絡があったぞ。ここが終わったら一度会いたいそうだ。一体何の話なんだ?」

「もう連絡あったの? 想像以上に早かったな。一応まだ内緒って言いたいところだけど、隠してもしょうがないし教えとくね。デビットも呼んでよ」


 この二人にもさっきの情報を共有した。

 その間、麗奈と咲は、恐竜もどきをバッタバッタ倒してた。


「なあTB、これは、もしかしてDキューブが中心にならないと成しえない話かもしれないぞ。ここが終わったら株主総会を行うべきだな」

「うちの株主総会って各国代表だから、確かにいいかもね。でも、その前に一応ブラック大統領たちに共同声明みたいなの出してもらって、世界の流れを決定づけたいよね」


 そんな話をしてたら唐突にボス部屋が現れた。


「えっ? 早くない?」

「TBそうでもないかもしれない。世界中にコアの摂取を発表したから、各国のダンジョンでも最先端の部隊はこの四十二層を攻略している国が増えている。ダンジョンが総合的に判断を下していると思えば、不思議ではないだろう」


「そっか、それじゃみんなに連絡とってボス部屋突入しよっか。今回は四班九十六人かー。多いけど大丈夫かな?」


 それから一時間後には四班の全員が揃って、ボス部屋への突入を行った。

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