徹底的な時代考証で、幕末に生きた人間の息吹を生々しく感じられる!

旧態依然としてあった価値観が綻び始めていた幕末
葛西様の千鳥シリーズは、元々、黒川藩の道場で年少者の指導を務める美しき師範代修之輔と、他藩からやってきた弘紀が出会ったことから始まりました。
弘紀は修之輔と二人きりの時のみ、10代の若者らしい姿をみせますが、封建社会の身分差、弘紀の君主という立場から、ただ二人だけの愛に溺れるなんて事は許されません。

時に感情を殺し、自分達の責務を果たしながら、それでも二人には互いしかいないのだと感じられる逢瀬のシーンは官能的で、緻密な文章で綴られるエロスを十分に堪能できます。

そして個人的に、外田様をはじめとするおじ様達のすったもんだが好きです!
血生臭い謀略が渦巻く中、あまり深く考えない無邪気なおじさん達に心癒されます。

自分の信じるものこそ、尊く唯一絶対であると信じ突き進む者、迷う者、深く考えず日常を歩む者
主要人物達だけではなく、その時代に生きたあらゆる人間の営みが、この作品に深みを与えているなと感じました。
まだ完結していませんが、最後まで目が離せません!

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翠雨の水紋