邪神舞う クトゥルー演劇 七変化

さぁさぁ紳士淑女の皆様、紳士淑女と呼ぶには若すぎるお坊ちゃま方お嬢様方も、今宵紹介いたします演目(物語)は、もう一つのあったかもしれない日本を舞台に邪神や邪神の子供たちや若き純真な青年が活躍する舞台劇となっております。
 サテ邪神とは何なのか。それは20世紀の亜米利加で活躍した小説家・HPL氏の作中で頻繁に取り上げられた、宇宙的存在でございます。皆様お馴染みの、海底に眠るタコの頭を持つ神様の他に、時空と次元を超える門にして鍵であるにもかかわらず子沢山な神様や無数の化身と姿を持つ厄介者など、人間様にはどうにも手に負えない存在たち――それが邪神でございます。
 え、邪神が登場するから怖そうだって? 確かに演目前の警告に二の足を踏むお客様もいるでしょう。しかしそここそが監督(モブ モブ夫氏)の腕の見せ所。暗澹とした不気味な儀式や凄惨なシーンも、透明感がありなおかつ優雅な表現でもって示しているために、それこそ別世界の出来事として観賞(閲覧)出来る仕様と相成っております。
 
 それではそろそろこの演目の魅力を紹介しましょう。この演目は幾つものステージ(章)に分かれているのですが、一連の流れがありながらもステージごとに様相を変える変幻自在ぶりこそが、この演目の最大の魅力でしょう。
 我らが主人公たる宮森青年が、教授の縁故により謎めいた結社に加入し、不気味な儀式を目の当たりにする第一幕。ここでは流麗かつユーモアを抑えた雰囲気にて、結社の行う儀式の異様さや、そこで登場する異形たちの不気味さを殊更強調した形を取っております。宮森青年の感じる不気味さや恐怖を、皆さまもわが事のように感じ取り、先の展開におののきつつも第一幕は終了と相成ります。
 第二幕では第一幕で登場した幼い宮司と彼が召喚した化け物と宮森青年のやり取りに費やされるわけですが……不穏な終わり方をした第一幕とのギャップ・宮司たちの意図に皆様も驚く事請け合いに違いありません。宮司を慕う「オニイチャン」というセリフも、第一幕と第二幕を観た(読んだ)後では、異なった印象を抱くはずです。
 さてさて、この演目は第三幕まで公演(公開)されており、まだまだ先があるようです。これから宮森青年たちはどのような動きを見せるのか、舞台はどのように――それこそ邪神らしく――変化していくのか。今後の公演に期待大です。

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