最終話 そして…
ライヴも無事終わり、翌日に俺とケンジとクミコさんとリューちゃんは部室の片付けに来ていた。
ケンジ 「うっし。おトナリさんにお礼もしたし、忘れ物はないな?」
ヒロキ 「ベースアンプとドラムは元々あったしな。」
クミコ 「ホントに終わっちゃったんだね…。そう思うと何か寂しい…。」
先生 「ワリ…皆(さっきまで話してた携帯を切って)急用だ。戻らないと…。」
ケンジ 「あぁ。全然OK!また遊ぼうね♪」
先生 「あたぼうよ!んじゃ、皆またなー!」
ヒロキ (手を振ってる)
クミコ 「またね♪」
ヒロキ 「終わったんだな…。」
ケンジ 「さっきクミコさんも言ったぞソレ。」
クミコ 「誘ってくれて有り難う。」
ヒロキ 「なにが?」
クミコ 「バンドよ。最初ホールで誘われた時はどうなる事やらと想ったけど…。」
ヒロキ 「あぁ。何だか凄く昔のように感じる…。」
ケンジ 「実際は半年ぐらいだけどな。」
ヒロキ 「無茶したよな。それでライヴするなんて。」
ケンジ 「時期は関係ないさ。音楽が好きならソレで成立する。」
ヒロキ 「ベースともお別れだな。」
ケンジ 「そうだな。」
ヒロキ 「福岡出たら金貯めて自分のベースを買うさ。」
ケンジ 「お。」
ヒロキ 「最初はこんなにハマるなんて思わなかった。」
ケンジ 「そうだな。」
ヒロキ 「母ちゃんも言ってたんだとよ。『ヒロキが一つの事にあんなに熱中するなんて珍しい。』って。」
ケンジ 「…飽き性だもんな。オマエ…。」
ヒロキ 「広く浅くがモットーなんでね。」
クミコ 「よく言うわ。」
ヒロキ 「やっとホンキになれるものを見つけたのかもな。」
ケンジ 「福岡に出てもやりたいよなぁ…。」
ヒロキ 「そうだな。」
クミコ 「頑張ってね。」
ヒロキ 「あぁ。」
ケンジ 「ナオコにユカにサトムラにタクヤは後一年学校だしな。」
ヒロキ 「俺は福岡だ。」
クミコ 「私も福岡。」
ケンジ 「俺もだな。」
ヒロキ 「ヤスは?」
ケンジ 「さぁ?」
ヒロキ 「最終的にリューちゃん先生も仲間になった事だしな。結構な人数になったよな。」
クミコ 「10人ぐらいかな。」
ケンジ 「多すぎだけどな。」
ヒロキ 「楽しかったじゃん。」
ケンジ 「あぁ。楽しかったな。」
クミコ 「シマ君とケンジの漫才も見れなくなるね。」
ヒロキ 「漫才なんてした覚えないけど?」
クミコ 「あれは漫才以外の何者でもないわ。」
その頃、壱岐高校では…
ナオコ 「終わったね。」(昼ご飯食べつつ)
ユカ 「本当は今日の部室の最後の片づけも行きたかったけどね。」
ナオコ 「ユカも残念だったね。ギター出来なくて。」
ユカ 「そうなのよぉ…。」
ナオコ 「今から皆バラバラになってくのかぁ…。」
ユカ 「て言ってもあの三人は皆福岡みたいだけどね。ヤス先輩は知らないけど。」
ナオコ 「福岡って言っても壱岐と違って広いのよ。」
ユカ 「知ってますぅ~。」
ナオコ 「またいつかあのメンバーでバンド出来たらイイなぁ…。」
ユカ 「ん?」(校門付近を見て)
ナオコ 「?…どうかした?」
ユカ 「あそこに人が…。」(校門付近で地図片手にキョロキョロしてる女が居る)
ナオコ 「行ってみようか。」(立つ)
ユカ 「そだね。」
そして二人は、その謎の女のもとへ。
近づくと女はギターらしきものを背負っている。
ナオコ 「どうかしたんですか?」
謎の女 「(少し驚いて)え?いやぁ、少し道に迷ったみたいで。」
ユカ 「ドコに行くんですか?」
謎の女 「マーメイドって店。」
ナオコ 「まーめいど?」
謎の女 「ライヴ出来るバーみたいな場所なんだけど。」
ユカ 「そう言えば背負ってるの…。」
謎の女 「あぁ。ギターよ。」
ユカ 「ライヴ出来るバーって言えば、昨日KENDYSでライヴした…。」
ナオコ 「あそこは『オーシャン』でしょうが。」
謎の女 「KENDYS?」
ナオコ 「あぁ。気にしないで下さい。」
謎の女 「困ったなぁ…。はるばる福岡から来たっていうのに…。」
ナオコ 「地図見せてください。」(と言って受け取ってみる)
謎の女 「分かる?」
ナオコ 「これだったら、この坂を下りて、左に曲がってまっすぐ行くと見えてくるハズです。」
謎の女 「そ。ありがとう。助かったわ。」
ナオコ 「いいえ。」
謎の女 「あ。」
ユカ 「なにか?」
謎の女 「KENDYSって、バンド?」
ナオコ 「そうですけど?」
ユカ 「昨日で解散しました。」
謎の女 「そう…。」
ユカ 「メンバー見てみたいなら案内しましょうか?近くに居ますから。因みにこのナオコはキーボードなんです。私はユカ。」
謎の女 「メンバーなんだ。」
ナオコ 「どうします?逢ってみます?」
謎の女 「やめとくわ。(ギターを指差して)こっちを優先させないとイケナイから。」
ユカ 「そうですかぁ…。残念…。」
謎の女 「じゃぁ、ありがとね。助かった。」
ナオコ 「お安い御用です。」
そして…。暫く経った後の部室では…。
ケンジ 「ふー。もう片付けもこのぐらいでイイだろ。」
ヒロキ 「また一年ぐらいしたら俺達が最初に来た時のようにカビだらけだろうがな。」
クミコ 「つかれたぁ…。」
ヒロキ 「片付けにまで付き合ってくれて有り難うね。」
クミコ 「当然よぉ。」
そこへナオコとユカが来る。
ナオコ 「おおーい。」
ケンジ 「あ・ナオコとユカじゃん。」
ヒロキ 「今日は来れないって言ってなかったか?」
クミコ 「何か慌ててるわね。」
ユカ 「ニュースです!」
ヒロキ 「ニュース?」
そしてナオコとユカは謎の女とのやり取りを話した。
ヒロキ 「『マーメイド』ねぇ…。」
ケンジ 「あそこは結構夜にライヴとかやってるみたいだぜ。」
クミコ 「年はどのくらいだった?」
ナオコ 「よく分からないですけど、私とそう変わりませんよ。たぶん。」
ケンジ 「でも『マーメイド』っていやぁ…俺達がやった『オーシャン』よりも大人な雰囲気の店らしいが…。」
ユカ 「今夜ライヴあるんなら見に行ってみません?」
ケンジ 「そうだな。今後の参考までに見ておいてもイイな。」
ヒロキ 「俺は島に帰らないと…。」
ケンジ 「また俺の家に泊まれよ。」
ヒロキ 「そうは行かない。それに…見たらまた弾きたくなんだろうが。」
ナオコ 「そっかー…。」
クミコ 「じゃぁ、シマ君は残念だけど不参加ね…。」
ケンジ 「後は行くか?」
ユカ 「もち。」
ナオコ 「じゃぁ私も。」
クミコ 「なら私も。」
ヒロキ 「楽しんで来るといいよ。」
そして夜…一行は『マーメイド』へとやって来た。
ケンジ 「(入り口で店の従業員と言い合いになってる。)なんで入れねーんだよ!」
従業員 「高校生だろうが。未成年は帰って寝ろ。酒出す店なんだよ。ウチは。」
クミコ 「酒なんかいらない。ただライヴを見せてって言ってんのよ!」
従業員 「ダメだ。」
ナオコ 「ギターの女の人呼んでくださいよ!!」
従業員 「ダメだ。」
ユカ 「なんでですか!!」
そこへ裏口が開いて中から人が一人出てくる。
謎の女 「フー…。スタジオ暑すぎ!」
ナオコ 「あ!!!」
謎の女 「あぁ昼間の。」
ナオコ 「この人達が昼に言ってたKENDYSのメンバーの人達です。」
ケンジ 「その名前を出すな。」
クミコ 「イキナリで悪いんだけど、ライヴ見せて欲しいの。」
従業員 「やめときな。」
ケンジ 「!!?」
従業員 「ガキが見て面白いライヴじゃない。」
ケンジ 「それはアンタが決める事じゃないだろ。」
謎の女 「私もガキよん♪」
従業員 「それとこれとは別だ。」
謎の女 「あらら…ワガママね。」
ケンジ 「もういい。帰る。」
謎の女 「あ!ちょっとちょっと!!」
ケンジ 「あ?」
謎の女 「パートは?」
ケンジ 「ギターだ。」
謎の女 「そう。で?なんで解散したの?KENDYS…だっけ?」
ケンジ 「その名を呼ぶな。俺達は卒業して福岡に出るからだ。」
謎の女 「へぇ。私も福岡なんだ。」
ケンジ 「そうか。」
謎の女 「その、アナタのバンドの音も聞いてみたかったけど。」
ケンジ 「聞いても得は無いかも知れないぞ。」
謎の女 「イイのよ。音楽が好きなら。」
ケンジ 「…また逢おう。」
謎の女 「それはゴメンだわ。」(微笑みながら)
ケンジ 「フン。帰るぞ。ミンナ。」
クミコ 「(従業員に)バーーーーーカッ!!」
ユカ 「(同じく)アホーーーーー!!」
ナオコ 「プチマッチョ!!」
従業員 「なんだあのクソガキ共は…。」
謎の女 「クソはどっちよ。」
従業員 「なんだと?」
謎の女 「さ。本番前にレンシューレンシュー。」(中へ入っていく)
従業員 「チッ…。」
そして春がやってきた。
4
四月の初めに俺は福岡へと旅立った。ケンジとクミコさんは既に福岡だった。
意外にも俺とケンジの住む場所はバスで20分たらずの場所だった。
そして、とある店で…。
ケンジ 「あの夜は思い出しただけでハラが立つぜ。」
ヒロキ 「ガキときたか。」
ケンジ 「…にしてもあの女…不思議なカンジだったな。」
ヒロキ 「まぁ俺には関係ないがな。」
ケンジ 「KENDYSは終わったけどさ。でも、これからもずっとバンドしていこうぜ。」
ヒロキ 「新KENDYSを作らないとな。」
ケンジ 「ヲイ。」
ヒロキ 「まぁ、ゆっくりジックリやってくべ。」
ケンジ 「まだ先は長いしな。」
KENDYS物語は一旦幕を閉じます。
俺がベースに出会い、触れ、ハマった。
これからも続けていくと思う。
だって音楽が好きだから…。
---THE END---
KENDYS物語 HR @hrisland0917
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